研究課題/領域番号 |
17K09942
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
猪口 孝一 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (10203267)
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研究分担者 |
山口 博樹 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90297937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / Hippo Pathway |
研究実績の概要 |
Hippo pathway(HP)は細胞接触や機械的ストレス刺激によって活性化するMSTやLATSの2つのキナーゼを中心としたリン酸化カスケードから構成される。MSTやLATSキナーゼは転写共役因子YAPならびにTAZをリン酸化しこれらを核内から細胞質に移行させプロテオソームで分解を促進する。このYAPやTAZが核内でWNT/β-cateninやTGF-β/Smads signaling pathwayなど腫瘍幹細胞の維持に必要であることが、報告されてきている。。我々はこの統括的な細胞制御機構がLeukemic stem cell: LSCの維持にも関与をしているのではないか考え、本研究を計画した。2017年度の研究において、骨髄球系細胞株において細胞密度の変化がHPのシグナル発現をどのように変化させるのかを明らかにするため、複数の急性骨髄性白血病(AML)由来細胞株を用いてWestern Blot法によるHP memberの発現解析を行った。特定の細胞株において細胞密度上昇によるMST1活性の亢進と核内でのYAP発現の低下が確認されたが、続発するWNT/β-catenin signalingの発現変化などは確認できなかった。そこで、我々は今年度の研究においてde novo AML 20症例より採取された臨床検体を用いて細胞溶解液、細胞質・核分画液のReverse Phase Protein Arrayによる網羅的なタンパク発現およびリン酸化修飾の解析を行った。この解析ではAMLの全例において細胞質内、核内ともにYAP1とTAZ1の発現は低く、またその発現・リン酸化と相関するHP memberの亢進も認められなかった。また腫瘍幹細胞の維持に関わるWNT/β-cateninやTGF-β/Smads signaling pathwayなどシグナルとの関連性も認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、我々は固形腫瘍において報告されている、YAP1の高発現と腫瘍幹細胞性維持の関連性に注目し研究を進めてきたが、これまでの解析結果からその関連性は低いように思われた。逆に、これまでに行ってきたAML細胞および臨床検体におけるHippo Pathway memberの発現解析からは、AMLにおいてYAP1/TAZ1といった因子の発現は非常に低いものと考えられた。本研究と同様に、最近AMLにおけるYAP1の低下が報告されてきている。一部の報告からは、このYAP1の低下が、リン酸化YAP1と共役して働くp73の活性を低下させアポトーシス抑制に働いている可能性も示唆されてきている
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今後の研究の推進方策 |
AMLにおいてYAP1/TAZ1の発現は概ね低値で、YAP1発現に依存した腫瘍幹細胞の存在は否定的と考えられた。その一方で、「現在までの進捗状況」の項でも言及したように、YAP1発現低下がアポトーシス抑制と関連している可能性が示唆されてきている。我々は今年度の研究においてde novo AML 20症例より採取された臨床検体を用いて細胞溶解液、細胞質・核分画液のReverse Phase Protein Array: RPPAによる網羅的なタンパク発現およびリン酸化修飾の解析を行っている。この中には、YAP1と共役するp73の発現やその標的となる転写物質の発現・リン酸化データも含まれている。今後、これらのデータを再解析し、背景にある遺伝子変異との関連性などについて検討を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、我々は固形腫瘍において報告されている、YAP1の高発現と腫瘍幹細胞性維持の関連性に注目し研究を進めてきたが、これまでの解析結果からその関連性は低いように思われた。このため研究の進捗状況が遅れているため次年度への使用額が生じた。AMLにおいてYAP1/TAZ1の発現は概ね低値で、YAP1発現に依存した腫瘍幹細胞の存在は否定的と考えられた。その一方で、「現在までの進捗状況」の項でも言及したように、YAP1発現低下がアポトーシス抑制と関連している可能性が示唆されてきている。我々は今年度の研究においてde novo AML 20症例より採取された臨床検体を用いて細胞溶解液、細胞質・核分画液のReverse Phase Protein Array: RPPAによる網羅的なタンパク発現およびリン酸化修飾の解析を行っている。この中には、YAP1と共役するp73の発現やその標的となる転写物質の発現・リン酸化データも含まれている。今後、これらのデータを再解析し、背景にある遺伝子変異との関連性などについて検討を行う計画である。
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