研究課題/領域番号 |
17K09943
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 晴美 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (20211344)
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研究分担者 |
小松 則夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50186798)
荒木 真理人 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80613843)
今井 美沙 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50709003)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アナグレリド / 本態性血小板血症 / non-responder / 遺伝子変異 / 個別化治療 |
研究実績の概要 |
アナグレリドは、血中の血小板数が異常に増加する本態性血小板血症(ET)の患者に対して、血小板数減少薬として2014年から本邦で使用が開始された。これまでの血小板減少薬と異なり、二次発がんのリスクがないことから、その使用の拡大が見込まれる。一方で、研究分担者の小松らの経験やカルテ調査から、3割超の患者では効果が認められないことが明らかになってきた。本研究はnon-responderの原因を薬物動態とその応答性に注目して検討し、個別化治療の実現を目的とする。 H29・30年度はアナグレリドのnon-responderに寄与する影響因子を抽出する目的で、カルテ調査によりアナグレリドを投薬開始後の血小板数、肝機能、腎機能などの推移を長期間観察し、投薬開始3ヶ月後に血小板数が40万個/μL未満になった患者を奏効群、血小板数の減少の見られない患者を不応答群に分類した。血小板減少効果に関与すると考えられる薬物動態関連遺伝子と疾病関連遺伝子を絞り込み、解析対象遺伝子として、CYP1A1、CYP1A2、CYP3A5、P-GP、BCRPと病態関連遺伝子JAK2、CALR、MPLについて、遺伝的多型(SNP)を解析条件を検討・確立し、SNP解析を行った。 次にSNP解析による効果判定マーカーを絞り込むことを目的に、各解析対象遺伝子の塩基配列を調査した。最終的に、アナグレリドの血小板減少と強い相関を示すSNPsの有無をロジスティック解析法により検討した。その結果、アナグレリドのnon-responderに関して投与前の血小板数に影響するヒドロキシウレアの治療歴とJAK2遺伝子変異を寄与因子として抽出することに成功した。更にH30年度はカルテ調査から抽出されたアナグレリドの反応性の影響因子の妥当性を立証するために、アナグレリド投与患者を対象に前向き臨床試験を開始できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①倫理承認の取得:本研究では、研究目的で患者からの採血や、遺伝情報の解析を行うことから、研究計画に倫理的な問題が無いことや、医学的かつ科学的な意義があることについて、全研究参加者の所属機関の倫理委員会に諮り、承認を取得した。 ②検体・臨床情報の収集と薬物動態解析:研究分担者の小松の所属する順天堂医院血液内科を受診し、アナグレリドを処方されたET(疑いを含む)患者のうち、研究参加に同意をした患者を選抜する。当該患者の末梢血から、確定診断に必要な遺伝子検査とSNP解析に用いるゲノムDNAを調製した。遺伝子検査を施行し、その結果と、収集した臨床情報を元に、WHO2008あるいはWHO2016診断基準に基づき、患者の確定診断を行った。 ③効果判定・関与因子の推定:カルテ調査により投薬開始後の血小板数、肝機能、腎機能などの推移を長期間観察し、投薬開始後3ヶ月で血小板数が40万個/μL未満になった患者を奏効群、血小板数の減少の見られない患者を不応答群に分類した。血小板減少効果に関与すると考えられる薬物動態関連遺伝子と疾病関連遺伝子を絞り込んだ。解析対象遺伝子としては、CYP1A1、CYP1A2、CYP3A5、P-GP、BCRP、JAK2、CALR、MPLなどの遺伝子変異(SNP)を解析対象とし、その解析条件を検討しSNP解析を行った。 ④SNP解析による効果判定マーカーの絞り込み:各解析対象遺伝子の対象領域の塩基配列を決定し、アナグレリドの血小板減少と強い相関を示すSNPsの有無をロジスティック解析法により検討した。 ⑤アナグレリド投与後の血小板数の時間推移の予測:母集団薬物動態解析を利用して、血小板数の時間推移とその変動要因について、間接反応モデルによるモデル構築に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
①検体やその臨床情報の収集、血中薬物濃度測定と薬物動態解析 研究分担者の小松の所属する順天堂医院血液内科を受診し、アナグレリドを処方されたET(疑いを含む)患者のうち、研究参加に同意をした患者を選抜する。当該患者の末梢血から、確定診断に必要な遺伝子検査とSNP解析に用いるゲノムDNAを調製する。遺伝子検査を施行し、その結果と、収集した臨床情報を元に、WHO2008あるいはWHO2016診断基準に基づき、患者の確定診断を行う。続いて、患者の投薬初日と投薬開始後1週間程度経過した時点において、投薬前、投薬後1、2、4、6、8時間後に抹消血から血清を取得し、凍結保存する。その後、血清検体を外部の測定機関に送付し、アナグレリドやその代謝産物であるBCH24426およびRL603の濃度を測定する。測定された血中濃度データと患者の臨床情報を基に母集団薬物動態解析を実施し、経口クリアランスを算出する。すでに前向き試験の一部をH30年度に開始できた。 ② 患者ごとに個別化したアナグレリド投薬量アルゴリズムの構築 経口クリアランスと血小板減少に寄与するSNPsを含む効果判定マーカーの影響の程度に関する定量的解析を行い、患者ごとに最適な投与量を算出して個別化医療を実現する。 ③成果発表:結果を取りまとめ、国際学会や学術誌において発表を行うと共に、社会に情報を発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費が予定額より下回ったため、次年度使用額が生じた。次年度に物品費として使用を予定している。
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