研究実績の概要 |
本年度 は, 眼慢性移植片対宿主病 (GVHD)で発症する ドライアイ症候群に対して, HSP47を標的とした局所療法を開発した。昨年度, HSP47を標的とするVitamin A結合Liposome(VA-lip)の点眼薬(VA-lip HSP47点眼)を, 移植後に投与することによって眼慢性GVHDによる涙腺の線維化を抑制し, 涙液分泌能を保持し, ドライアイ症候群を予防できることを発見した。さらに本年度は, ドライアイ症候群が発症後に, VA-lip HSP47点眼を投与することで眼慢性GVHDを治療できるか否かを検討した。マウス慢性GVHDモデルで, 移植後3週間経つと涙腺の線維化が発症し涙液分泌量が低下していた。その後3週間VA-lip HSP47点眼を使用したところ, 涙腺の線維化は移植後3週間の時点より軽減され, 涙液量も増加することが示された。こうした結果は, ヒトの同種造血幹細胞移植後に発症した眼慢性GVHDの治療にVA-lip HSP47点眼が使用できることを示唆する重要な結果と考え, Blood Advances誌に投稿し掲載された。GVHDの発症に関わる腸内細菌叢について国際共同研究を行い, 菌叢の変化が移植の成績を左右することを確認した。さらに, VA-lip HSP47点眼が有効な患者を同定するためのバイオマーカーを同定するため, 慢性GVHDで線維化の程度と血清HSP47濃度が相関するか否かを, マウスモデルなどを用いて検討するための, 検体を収集した。
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