1) SATB1が制御する遺伝子locusの同定 :N末端に2種類の人工タグを有するSATB1を発現するマウスを作製し、生殖細胞系列の導入が成功したところまでは申請時に確認していた。得られた仔マウスを用い、C57B6/J系列の純系マウスと戻し交配を繰り返し行った。現在、12世代以上の戻し交配が完了している。また、SATB1を標的としたChip-assayの効率を高めるための条件検討を行った。 (2) SATB1発現レベルと調節を受ける遺伝子の変化の解析:(1)で作製した、戻し交配途中のタグ化SATB1発現マウスとSATB1レポーターマウスを交配し、両アリルを持つ個体が正常に出生・発育し、妊孕性にも問題のないことを観察した。また、産仔の食殺が多く個体数を得るのに難渋したが、里親を用意するなどの工夫に より安定した数が得られつつある。 (3) SATB1と造血幹細胞の老化との関係の解析:SATB1レポーターマウスにつき、各月齢のマウスグループが安定して得られるよう、交配・飼育計画を立案し実行した。その結果、高齢になる、腫瘍発生率が上がることが判明した。さらに、平成30年度にこれまでの研究で得られた知見をまとめた論文「核クロマチン構造調節蛋白Special AT-rich sequence binding protein 1 (SATB1)の発現量変動は、造血幹細胞の運命決定における揺らぎと不均一性を調節する」が学術雑誌に論文掲載されたことを報告している。その研究をさらに発展させるための予備実験を立案し、両者の造血幹細胞における、SATB1や、幹細胞性の維持・リンパ球分化に関連する遺伝子の発現量のゆらぎを数値化したところ、ゆらぎの大きくなる傾向のある遺伝子と小さくなる遺伝子に二極化することを見出した。
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