研究課題
移植後シクロフォスファミド療法(PTCy)は、HLA半合致移植(ハプロ移植)の設定においても効率的に急性移植片対宿主病(急性GVHD)を予防するが、一方で、移植片白血病効果(GVL効果)が減弱する可能性が指摘されている。今回の研究では、昨年度までにPTCy移植をモデル化した担がんマウス実験系を確立し、この系を用いて、(1)PTCyの減量を行うことでGVLを強化できること、(2)PTCyの減量により低下するGVHD抑制活性は、PTCy直後にNKT細胞リガンド(リポゾーム化α-ガラクトシルセラミド; lipo-αGC)を投与することにより補償されること、を実験的に明らかにした。この結果から、減量PTCy後にlipo-αGCをアジュバントとして加える治療戦略は、GVHD抑制活性を担保しつつGVLを強化する可能性が示された。最終年度はこのメカニズムを解明するため、詳細な細胞免疫学的解析とRNAseqによる遺伝子発現解析を行った。解析結果から、lipo-αGCは樹状細胞ではなくドナー由来B細胞によってNKT細胞へ提示されること、これにより、効率的に免疫寛容性NKT2表現型へ分化させ、一方で、向炎症性NK-like-NKT1表現型への分化を抑制し、ドナー由来T細胞の回復、特に制御性T細胞の回復を促進させることが明らかになった。これらの結果は、特に潜在的な再発リスクのある患者に対して、PTCyベースの移植を最適化するための新しい免疫アジュバント療法開発の端緒となると考えられる。
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Blood Adv.
巻: 3 ページ: 4081-4094.
10.1182/bloodadvances.2019000134.