研究課題/領域番号 |
17K09959
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
大河原 浩 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (10381360)
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研究分担者 |
小川 一英 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40423800)
池添 隆之 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80294833)
池田 和彦 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (90381392)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 同種造血幹細胞移植 / 移植片対宿主病 / 血栓性微小血管障害症 / Gas6 |
研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植(HSCT)症例の血清growth arrest-specific gene 6(Gas6)は急性移植片対宿主病(GVHD)や移植関連血栓性微小血管障害症(TMA)発症の好発時期3-5週に増加した。血清Gas6はドナーTリンパ球及び単球から分泌された。 腸GVHD組織の免疫染色でGas6及びGas6の受容体であるTAM受容体MerTKが高発現していた。また、血清Gas6はDダイマー及びPIC増加と相関し、TAM受容体阻害剤は血小板凝集惹起物質で誘導される血小板凝集を著明に抑制した。このことはGas6-TAMシグナルが血栓形成及び凝固異常に関与することを示唆する。培養内皮細胞を用いたin vitro実験で、Gas6、HSCT血清添加は内皮機能障害(抗凝固因子トロンボモジュリン発現低下、内皮型一酸化窒素(NO)合成酵素発現低下、プラスミノーゲン活性化抑制因子-1(PAI-1)、接着分子ICAM-1及びICAM-1発現増加)を誘導し、TAM受容体阻害剤はそれら内皮機能障害を抑制した。さらに、Gas6、HSCT血清添加は内皮細胞アポトーシスを誘導し、TAM受容体阻害剤はそのアポトーシス誘導を抑制した。これらの結果より、Gas6-TAMシグナルの阻害は GVHD及びTMAの共通病態、発症トリガーである内皮障害を抑制することを示唆する。同種移植マウス実験では、肝GVHD病変と肝腎TMA病変がTAM受容体阻害剤で抑制され、生存率が改善される。さらに、TAM受容体阻害剤はマウスモデルのドナーTリンパ球活性化及びTreg数低下を抑制することが証明される。本研究はGVHD及びTMA病態の一端を解明し、 Gas6-TAMシグナルが画期的な治療標的の開発や新たな検査法開発に寄与する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第79回日本血液学会学術集会の学会発表などで研究成果を報告している。また、本年度の日本血液学会学術集会及び米国血液学会への研究成果を報告する準備は順調に進展している。 学会発表 Sho Takeyasu, Hiroshi Ohkawara, Koichiro Fukuchi, Wang Xiangmin, Koki Ueda, Kazuhiko Ikeda, Kazuei Ogawa,Takayuki Ikezoe. A critical role of growth arrest-specific gene 6 in the pathogenesis of HSCT-associated thrombotic microangiopathy. 第79回日本血液学会学術集会 (2017.10.20東京) 優秀ポスター賞受賞
賞与 認定公益信託 日本白血病研究基金 平成29年度研究賞 大河原 浩 福島県医科大学 血液内科学講座 GVHD及びTMAの病態におけるGas6関連シグナルの役割を解明し、Gas6関連 シグナルがGVHD及びTMAにおける新たな治療戦.略候補やバイオマーカーとなりえることを明らかにする
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今後の研究の推進方策 |
1. HSCT症例の血清Gas6濃度とGVHD指標(障害臓器、最高grade、IL-2R等)及びTMA指標(凝固/線溶関連マーカー、LDH等)との関連を明らかにする。
2. Gas6、 HSCT症例血清を培養血管内皮細胞に添加し、トロンボモジュリン、eNOS、組織因子、PAI-1、接着分子ICAM-1、VCAM-1発現を検討する。また、同時にMAPキナーゼ、カスパーゼ、NF-κB活性を誘導するか否かを検証する、さらに、それら反応に対するTAM受容体阻害剤(UNC2250)及びsiRNAの効果を検証する。以上の結果はGVHD及びTMAの共通病態である内皮機能障害の分子機構の一端を明らかにする。
3. ドナーB6.SJL-PtprcaPEP3b/BoyJマウス、レシピエントBALB/Cマウスを用いた同種移植マウスを作成する。 ①マウス血清Gas6をELISAで、 FOXP3+Tregを含む免疫担当細胞動態をフロサイトメトリー(FCM)で測定する。②マウスモデルのGVHD病変(肝臓、腸管等)、TMA病変(腎臓等)及び免疫担当細胞におけるGas6とTAM受容体発現を免疫染色とFCMで検証する。③マウスモデルにTAM受容体阻害剤を投与し、GVHD及びTMAに対する阻害剤の抑制効果を病理組織学的、免疫担当細胞動態解析にて明らかする。コントロール群と阻害剤投与群との生存率を比較検討する。本研究は2019年までにまとめ、研究成果は国内外学会(日本血液学会、米国血液学会)に発表し、 国際的学術雑誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等が想定より長く使用できたものが多かった。 検証実験が増える次年度に必要試薬を多く購入する必要があり、次年度使用額として有意義に活用したい。
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