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2018 年度 実施状況報告書

造血幹細胞移植後の免疫システムにおけるGas6の役割

研究課題

研究課題/領域番号 17K09959
研究機関福島県立医科大学

研究代表者

大河原 浩  福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10381360)

研究分担者 小川 一英  福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40423800)
池添 隆之  福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80294833)
池田 和彦  福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90381392)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードGVHD / Gas6 / Mer
研究実績の概要

同種造血幹細胞移植に関連する移植片対宿主病(GVHD)の分子機構の詳細は不明な点が多い.これまでの我々の予備実験では, 急性GVHDの好発時期に血清Gas6は有意に増加していた。しかも, gradeII以上のGVHD症例に有意に高値である興味深い結果を得た. さらに,我々は血清Gas6はFCMによってドナーTリンパ球及び単球から分泌される可能性を見出した. また, 血清Gas6は凝固/線溶関連マーカーや各種ケモカインと相関関係を示す興味深い結果を得た. また, 病理組織学的検討では、腸管GVHD病変組織にGas6及びTAM受容体Merが高発現することを明らかにした. 培養血管内皮細胞を用いたin vitro実験では, rGas6及びgradeⅢのGVHD患者血清が血管内皮障害(ICAM-1及びICAM-1発現増加)を誘導し、Mer阻害剤はそれらの蛋白発現変化を抑えた. さらに, rGas6及びGVHD患者血清は内皮細胞のアポトーシスを誘導したが, Mer阻害剤はそのアポトーシス誘導を抑えた。これらの結果は, GVHDの重要な病態である血管内皮障害の分子機序に, Gas6-Merシグナルが重要な役割を担うことを示す. さらに, GVHDを誘導させた同種移植マウスを用いたin vivo実験で, GVHD誘導マウスの血清Gas6は有意に増加した. 病理組織学的検討では肝GVHDの病変組織でGas6とMer発現増加を認めた. さらに, GVHD誘導マウスにMer阻害剤を静脈内投与すると, GVHD病変が著明に改善した. 本研究はGVHDの病態解明に寄与するとともに, Gas6-Merシグナルが新たな治療標的候補や新規バイオマーカーとなることを証明した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々の研究成果は新たな創薬や検査法の開発に大きく貢献できる可能性を秘めている。これらの研究結果は2018年10月日本血液学会総会(大阪)、2018年12月米国血液学会学術集会(サンディエゴ)にて発表した。当研究内容は現在米国雑誌blood advancesに投稿され追加実験中である。

今後の研究の推進方策

1)内皮障害を起因としたGVHDの分子機序におけるGas6/TAM systemの役割
rGas6, サイトカインにより誘導された内皮障害マーカー(TM, PAI-1,VCAM-1,eNOS等)の発現変化をRT-PCR及びWestern blottingにて検証する. 詳細な分子機序の解明のため, MAP kinase、NF-kappaB活性、低分子GTPase活性を検証する. それら発現や活性化に対する選択的TAM阻害薬(UNC2250, TP-0903, BGB324), 抗Gas6中和抗体の効果を検証する.
2)TA-TMAの新規治療候補の探索
ドナーB6.SJL-PtprcaPEP3b/BoyJマウス, レシピエントBALB/Cマウスを用いたHSCTマウスを作成する.A)マウスに選択的TAM阻害剤を投与し、GVHD病変(肝, 腎, 皮膚, 消化管)に対する効果を検証する. 対照群と阻害剤投与群との生存率を比較検討する. B)マウス血中のFOXP3+Tregを含む免疫担当細胞, CD123+樹状細胞の動態をFCMで測定する. それら細胞動態に対する選択的TAM阻害剤, 抗Gas6中和抗体の効果を検証する.本研究はGas6/TAM systemがTA-TMAの病態において重要な役割を演じることを証明し, GVHDに対する新たな創薬や検査法の開発に貢献できる可能性を秘めており, 血液診療の向上に貢献する.

次年度使用額が生じた理由

これまでの研究成果から, 我々はGas6-Mer axisがGVHDの新規治療標的である可能性を示した. 今後の課題は①これまでの研究成果を踏まえ, GVHDの病態をより詳細に解明する.②Gas6, 可溶性MerがGVHDの臨床応用可能なマーカーとなることを明確にする. ③選択的TAM阻害薬, 抗Gas6中和抗体がGVHDの治療薬候補であることを明確にする. 臨床への実用化に向けた研究を目指す.GVHDはHSCTの生命予後を左右する合併症である. しかしながら, GVHDの病態は不明な点が多く, 標準治療の確立は急務である. また, 従来のTA-TMAの診断指標は発症予知, 治療反応や予後予測には十分とはいえず,新規マーカーの同定が求められている. Gas6/TAM systemはGVHDの有用なバイオマーカー及び新規治療標的となる可能性を秘めており, 本研究成果は血液診療の向上に貢献する.今後の課題を詳細に検討するため, 次年度使用額が生じました.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] GVHD及びTMAの病態におけるGas6-TAM受容体シグナルの関与2018

    • 著者名/発表者名
      古川未希 大河原浩
    • 学会等名
      2018年10月日本血液学会総会(大阪)
  • [学会発表] A Critical Role of Growth Arrest-Specific Gene 6-Mer Axis in the Pathogenesis of Endothelial Damage Contributing to Thrombotic Microangiopathy Associated with Graft-Versus-Host Disease after Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation2018

    • 著者名/発表者名
      古川未希 大河原浩
    • 学会等名
      2018年12月米国血液学会学術集会(サンディエゴ)
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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