研究課題/領域番号 |
17K09960
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
花園 豊 自治医科大学, 医学部, 教授 (70251246)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ピッグ / SCID / 無菌飼育 / 造血幹細胞移植 |
研究実績の概要 |
重症複合免疫不全症(SCID)は、生まれつき免疫がなく、頻繁に感染症に罹患する。無菌アイソレーターの中で過ごすためBubble boy disease と呼ばれる。最も多いX染色体連鎖SCIDは、IL2受容体γ鎖(IL2Rg)遺伝子に変異があり、男子のみ発症する。約10万人に1人。2歳までに骨髄移植が必須(未移植は死亡、移植により約半数が生存)。多くのケースではドナーが見つからない(>75%)。本研究では、SCIDのピッグモデルを利用して、SCIDの出生前造血幹細胞治療を開発する。出生前なら、HLAが不一致でも移植可で、両親をドナーにできるメリットがある。 本年度、我々は明治大学と共同で、SCIDピッグの繁殖に成功した(長嶋・花園ら特願2014-078986、Matsunari H et al. PNAS 2018)。さらに、無菌的に娩出したSCIDピッグを無菌アイソレーターに収容し3ヶ月にわたって無菌飼育に成功した(Hara H et al. Exp Anim in press)。 さらに本年度は、健常ピッグをレシピエントとするピッグ造血幹細胞の自家移植を初めて実施した。ピッグでは造血幹細胞マーカー、たとえばCD34に対する抗体がなく、これを用いた造血幹細胞の濃縮ができない。骨髄細胞を濃縮せずそのまま移植すると、骨髄中のT細胞がレシピエント組織を攻撃する、いわゆる移植片対宿主病(GVHD)が生じる。今回は、移植細胞からTリンパ球を除去して移植した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SCIDピッグはその免疫不全の故、生後1ヶ月で死亡し繁殖年齢に達することはない。そのためSCIDピッグの繁殖は困難だったが、我々は明治大学と共同で、SCIDピッグの繁殖に成功した(特願2014-078986、Matsunari H et al. PNAS 2018)。さらに我々は、無菌的に娩出したSCIDピッグを無菌アイソレーターに収容し3ヶ月にわたって無菌飼育に成功した(Hara H et al. Exp Anim in press)。 ピッグでは造血幹細胞マーカー、たとえばCD34に対する抗体がなく、造血幹細胞を濃縮できない。造血幹細胞を濃縮せずそのまま移植すると、同種移植の場合、骨髄中のT細胞がレシピエント組織を攻撃する、いわゆる移植片対宿主病(GVHD)が生じる。移植細胞からTリンパ球を除去して移植することとした。本年度は、健常ピッグをレシピエントとするピッグ造血幹細胞移植を初めて実施。今回は自家移植。移植自体は成功した。
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今後の研究の推進方策 |
SCIDピッグ胎仔の組織採取が技術的に難しい。ピッグ子宮の構造上の問題や、ピッグが流産しやすいといったことが理由である。ピッグ胎仔の組織採取ができなければ、SCIDの出生前診断は困難である。出生前にSCIDを診断できなければ出生前の治療はもとより難しい。このことは研究計画段階で予想されていたことではある。交付申請書の研究計画で述べたとおり、当面、出生直後の治療になる見込みである。 本年度は、健常ピッグをレシピエントとする造血幹細胞移植を初めて実施した。今回は自家移植。移植自体は成功した。ただし、レシピエントのピッグは、ブスルファン前処置による重度の貧血によってあいにく死亡。ピッグでは赤血球寿命が17日余りしかないことが判明。これだけ赤血球寿命が短いと、人間と異なり輸血療法が無効。SCIDピッグの治療的移植では前処置を行わない方針に変更となった。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に計画された実験の一部は大学予算を充当できたので、その分が次年度使用額となった。次年度は数頭のSCIDピッグの治療実験が見込まれている。本学と明治大学で開発したSCIDピッグは本年度上市された(ポルメドテック社)。次年度以降、SCIDピッグは同会社から購入によって調達し実験に供することになる。次年度使用額は当該年度分と併せて、SCIDピッグの調達・実験費用に充てる。
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