本年度においては、造血幹細胞特異的機構に焦点を当てるため、報告者により作製済みの造血幹細胞に結合性を示す抗体ライブラリーより、より造血幹細胞に結合特異性の高いクローンのスクリーニングを行った。約500クローンの抗体すべてのスクリーニングを行い、最終的に、9クローンの候補抗体を見出した。これらの候補抗体の中から、造血幹細胞に対して高い結合特異性を有するものから優先順位をつけ、異種間移植による移植実験により、候補抗原の造血幹細胞特異性を評価した。これらの候補抗原の内、クローンXにおいてはヒト臍帯血由来分化抗原陰性細胞を、陽性および陰性分画に亜分画し移植したところ、陽性分画に非常に強い造血幹細胞活性が認められた。このことから、クローンXが認識する抗原は、造血幹細胞に特異的に発現していることが示唆された。その後、このクローンXが認識する抗原を同定するため、クローンXに対する結合性を有する細胞株の探索を行った。その結果、白血病由来細胞株であるKG-1細胞にクローンXの抗原が強く発現していることが明らかとなった。そこで、KG-1細胞よりSDSによりタンパク質を抽出し、クローンXが結合可能であるかをdot blotにより評価したところ、この条件においては、検出不能であった。このことから、通常のWestern Blottingでは、クローンXの認識する抗原の分子量を同定することが困難であることが予想された。現在、より穏やかなタンパク質抽出条件を用いて、blottingにより検出可能であるか検討を行っている。
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