本研究テーマを完遂するために、1)免疫細胞の司令官たるヒト樹状細胞(Denderitic Cell:DC)の活性化と多発性骨髄腫新治療薬である、IMiDs、エロツズマブ(抗SLAMF7 抗体)、カルフィルゾミブ、イキサゾミブによる細胞障害性、成熟能に対する作用、サイトカイン産生能に対する作用を検討した。これらの薬剤の、DCに対する免疫応答調節機序の報告はこれまでに無い。1)IMiDsである、レナリドミドとポマリドミドは、ヒトDCサブセットである、plasmacytoid DCに作用し、その機能を維持し、IFN-alphaの産生を増強するポテンシャルを有していた。2)エロツズマブに関して、TARGETであるSLAMF7発現をヒトDCサブセットで検討し、それぞれの刺激物質により、その発現が上昇することを確認した。ただし、エロツズマブ単独添加によりDCサブセットの活性化は認められなかった。しかしIMiDsとのコンビネーションにおいて、ミエロイド系DCが有するTh2細胞誘導能を増強する効果が認められた。3)プロテアソーム阻害薬であるカルフィルゾミブとイキサゾミブは24時間培養によってDCに抑制的に作動することが同定されたが、カルフィルゾミブは、非常に短期間のピークコンセントレーションの後、非常に低いトラフレベルで推移するため、これに合わせた二相性の培養システムで解析をしたところ、ピークコンセントレーションの刺激により、plasmacytoid DCに対して、IFN-alpha産生をむしろ増強させることが判明した。一方、イキサゾミブは内服薬であるためピーク濃度も比較的低く、緩やかにトラフレベルへ推移する。ピーク濃度での24時間刺激では軽度にDCサブセットの生存性、成熟性、サイトカイン産生能を軽度抑制するが、トラフレベルの24時間培養では、抑制は認められなかった。
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