膠原病に伴う肺高血圧症の発症機序・病態について、我々は、低酸素応答抑制分子IPAS/HIF-3α遺伝子多型が膠原病性肺高血圧症患者に高頻度で認められる事を発見し研究を展開している。本研究はIPAS/HIF-3α遺伝子多型が膠原病性肺高血圧症の発症進展に①どの程度寄与するか②いかなるメカニズムで寄与するかを解明し、膠原病性肺高血圧症の病態におけるIPAS/HIF-3αシグナルの意義を究明することを目指す。令和1年度は以下の実施計画のもと研究が展開された。 1)SNP導入IPAS/HIF-3αが特異的に制御する標的遺伝子の探索 2)IPAS/HIF-3α遺伝子異常がもたらす肺動脈性肺高血圧症類似形質の解析(その1):IPAS/HIF-3αKOマウスの形質の解析、IPAS/HIF-3αKOマウスにおける肺高血圧症モデル負荷とその解析を行い、IPAS/HIF-3α遺伝子欠損が導く肺血管異常とその生化学的変化を明確にする。1)について今年度は、IPAS/HIF-3α発現HeLa細胞を用い、Ampli Seq法による高感度解析をおこなった。特に、野生型IPAS/HIF-3α発現細胞に比し、SNP導入IPAS/HIF-3α発現細胞において発現が上昇する遺伝子を複数同定した。それらの遺伝子は、野生型IPAS/HIF-3α発現により生じた発現抑制の解除ではなく、SNP導入IPAS/HIF-3αによる陽性制御により発現が増強したものであることが判明した。 2)についてはIPAS/HIF-3αKOマウスのホモ接合体を得た。KOマウスは通常通り出生したが繁殖が低効率であり、肺高血圧症モデル負荷などを行う十分な個体数が得られていない。
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