研究実績の概要 |
転写因子GATA2は,血管内皮細胞や,血球分化に不可欠であり,GATA2変異疾患では10%程度に肺動脈性肺高血圧症 (PAH)を認めるが,その詳細は不明である.また,自然リンパ球(ILC)2とPAHとの関連は不明である.ILC2の分化と維持にはGATA3が関与し, GATA2ノックアウト(GATA2-KO)によりGATA3は増幅される可能性がある.この研究の目的は,GATA2 変異によるPAH発症の機序と,ILC2の関与について検討した. 私たちは, GATA2コンディショニングノックアウトマウスを樹立した. GATA2floxマウスはGATA2のDNA結合に重要なエクソン5の両端にfloxを入れて,そのマウスをER-Creマウスと掛け合わせる. マウスER-Creは,タモキシフェン(TMX)投与によりGATA2のエクソン5が欠損することで全身のGATA2機能欠損を来たす.flox/flox-ER-Creマウスにおいて,TMX導入,または非導入で比較検討した. マウスを低酸素室で飼育し, TMXを腹腔内投与しday 20-22にPAHを誘導した.GATA2-KOマウスでは, コントロールと比較して, 肺動脈のリモデリングが強い傾向にあり,肺動脈周囲には炎症細胞浸潤をより多く認める傾向にあった. また,GATA2-KOマウスとコントロール(WT)の脾臓を比較したところ,GATA2-KOマウスの方が,優位に多くのGATA3発現を認めた.GATA3は, ILC2の分化と維持に不可欠であるが,ILC2の細胞数が少なく,検討に難渋した. 別の実験で,GATA2-GFPノックインマウスにおいて,肺細動脈にGATA-2を有意に発現していることを確認した.これらより,GATA-2 KOマウスでは,肺細動脈のリモデリング起こりやすく,PAH発症の要因となる可能性を示唆した.
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