研究課題
われわれはこれまでに、日本人集団において、MPO-ANCA陽性血管炎(MPO-AAV)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症(SSc)、関節リウマチ(RA)などの膠原病の疾患抵抗性に、HLA-DRB1*13:02が共通に関連することを報告してきた。しかし、分子機構を説明しうる一義的疾患抵抗性関連バリアントは見出されていない。本研究では、HLA領域の次世代シークエンス解析に基づき、DRB1*13:02の疾患抵抗性を説明しうる一義的バリアントを特定すること、あわせて、上記疾患群の感受性と関連するDRB1アリルについても、同様に一義的関連バリアントを見出すことを目的とする。平成29年度は、連携研究者である細道(金沢大)らが確立したsequence capture法を用い、日本人MPO-ANCA陽性血管炎(MPO-AAV)196例および健常対照群196例を対象として、 HLA-DR遺伝子領域、DQ遺伝子領域およびそれらの遺伝子間領域の次世代シークエンス解析を施行した。また、次世代シークエンス結果のデータ解析システムを研究室内に構築した。解析に支障のないクオリティのシークエンスデータが得られていることが確認され、これらの領域のバリアントについて、MPO-AAVの疾患感受性との関連解析を進めている。これと平行して、HLA-DRB1*09:01と疾患感受性、DRB1*13:02と疾患抵抗性との関連について、ヨーロッパ系集団におけるMPO-AAVのゲノムワイド関連研究(GWAS)から報告されたHLA-DQ遺伝子近傍のSNP(rs5000634)(GWAS SNP)との関係性を検討した。日本人MPO-AAVにおいてはrs5000634Aアリルの減少傾向が観察されたが(P=0.044),DRB1*09:01, DRB1*13:02 で調整すると関連は消失した.逆に、DRB1*09:01, DRB1*13:02の関連はrs5000634で調整後も有意であった。従って、少なくとも日本人集団においては、GWAS SNPの関連はHLA-DRB1アリル(あるいはそれと強い連鎖不平衡にあるアリル)との連鎖不平衡に起因する二次的な関連であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンス解析は、当初、初年度はAAV、全身性エリテマトーデス(SLE)、健常対照群それぞれ96例と計画していたが、サンプルサイズを増やすことが可能であったため、AAV196例、健常対照群196例に変更した。また、研究室内にシークエンスデータ解析が可能なシステムをセットアップした。これらに基づき、現在、現在、順調に関連解析を進めている。加えて、当初、初年度には予定していなかった、ヨーロッパ系集団におけるGWASで見出されたSNPの関連を日本人集団において解析し、学会報告を行った。シークエンスから得られた候補バリアントを確認するための追加試料収集については若干遅れているものの、以上により、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断する。
今後、SLEについても次世代シークエンス解析を実施し、AAV、SLEそれぞれについて、一義的と思われる疾患感受性および抵抗性バリアント候補を抽出する。それらを対象に、AAV、SLEに加えて、共通にHLA-DRB1*13:02と疾患抵抗性との関連が認められる関節リウマチや全身性強皮症をも含め、さらに追加試料の収集を進めた上で、多数検体を対象としたSNPタイピングを施行する。これらにより、MHC領域において独立の寄与を有する疾患関連バリアントの特定していく予定である。
次世代シークエンス解析は同時に多数試料の解析を行うため、機器の使用状況や試料の準備状況等により、研究費の使用時期に若干の遅れが生じたために次年度使用額が生じたが、研究計画自体は概ね順調に進行しており、特に変更はない。次年度使用額は、もともと予定されているシークエンス解析およびSNP解析のために次年度使用する計画である。
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