研究課題
2018年度には、日本人ANCA関連血管炎(AAV)患者、健常対照者各192例のゲノムDNAを対象に、MHC-class IIからclass III境界領域に至る約400kbの領域のシークエンス解析を、ショートリード型次世代シークエンサ(MiSeq)を用いて施行し、バリアントの検出と関連解析を行った。申請者らがすでに報告したHLA-DRB1*09:01-DQB1*03:03ハプロタイプと疾患感受性、DRB1*13:02と疾患抵抗性との関連に加えて、これらとの連鎖不平衡のみでは説明できない複数のAAV関連バリアントが検出され、一義的、あるいは独立の関連バリアント候補と考えられた。臨床フェノタイプとして、疾患感受性のみならず、AAVにおける重症合併症である間質性肺疾患の合併との関連、および、寛解を達成した症例における再燃のリスクとの関連の解析も施行した。また、別研究課題において解析中である日本人AAVのゲノムワイド関連研究におけるHLA-class II領域の解析結果と合わせてシークエンスデータを解析し、同領域には、複数の独立のAAV遺伝因子が存在することを示唆する知見を見出すとともに、インフォマティクス解析により、それらが異なる機序で発症に寄与する可能性があることを示唆する知見を得た。さらに、シークエンス解析から得られた候補バリアントの関連を確認するための独立のサンプルサイズを増やすために、AAV、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症患者のゲノムDNAと臨床情報を、新たに100名以上の研究参加者から収集し、その一部において、HLA-DRB1アリルタイピングを行った。
3: やや遅れている
MHC-class II/class III領域の次世代シークエンス解析により、既報のHLAアリルとの関連による連鎖不平衡のみでは説明できない複数のバリアントを見いだしたことから、おおむね順調に進行している。しかし、新たな患者群の試料と臨床情報の収集に予想以上に時間を要しているため、候補バリアントのバリデーション研究の開始がやや遅れている。
候補として選定された複数のバリアントについて、AAV、SLE、全身性強皮症を対象に、新規収集試料を含めた多数試料を対象に、関連の確認と独立性の検討を行う。ロジスティック回帰分析により、一義的な寄与を有するバリアントを特定し、複数の膠原病に対して共通の疾患感受性関連バリアント、抵抗性関連バリアントを特定する。また、疾患感受性に加え、重症合併症や再燃との関連も合わせて進める。これらのバリアントについて、インフォマティクス解析等により、関連の機序を考察する。
新規の試料収集に予想以上に時間を要しているため、多数試料における遺伝型解析と関連研究の開始が遅くなっているため。次年度使用額は、2019年度に施行する遺伝型解析に使用する。
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