研究課題/領域番号 |
17K09969
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 浩太郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (90554634)
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研究分担者 |
中島 裕史 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (00322024)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | SLE / 濾胞ヘルパーT細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、CD4陽性T細胞に発現するAchaete-scute homologue 2 (Ascl2)による全身性エリテマトーデス(SLE)発症の分子メカニズムを明らかにし、Ascl2、或はその標的分子をターゲットとしたSLEの新規治療法開発に向けた基盤を確立することを目的としている。SLEでは、核内のDNAや核蛋白質が主要な自己抗原と考えられているが、これらはendosomal toll-like receptor (TLR3/7/8/9)のagonistでもあり、SLEの病態形成、炎症増悪に重要な役割をはたしていることが近年示唆されている。 本年度は、TLR7 agonistであるImiquimodを用いたImiquimod-induced lupusをSLEのモデルマウスとして用い、主にCD4陽性T細胞のサブクラスやその動態の解析を行った。野生型C57BL/6マウスにImiquimodを週3回塗布していったところ、塗布開始4週ころよりタンパク尿の増加が認められるようになり糸球体腎炎の発症が示唆された。塗布開始8週後の腎臓を組織学的に解析したところメサンギウム領域の増加が認められた。また蛍光抗体法により免疫組織学的解析を行ったところ、糸球体基底膜にIgGやIgMの沈着が認められ、ヒトループス腎炎と似た組織像を呈していた。さらにImiquimod塗布開始8週後の血清を調べたところ、ヒトSLE患者でみられる抗ds-DNA抗体が認められ、脾臓の解析では胚中心の増加と、抗体産生に重要な濾胞ヘルパーT細胞の増加が認められた。以上より、Imiquimod-induced lupusモデルマウスにおいて、濾胞ヘルパーT細胞の増加が、SLEの病態形成に重要な役割をはたしている抗ds-DNA抗体の出現に関与していることが証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は全身性エリテマトーデス(SLE)のマウスモデルであるImiquimod-induced lupusにおける濾胞ヘルパーT細胞の動態とその役割について解析した。濾胞ヘルパーT細胞は、Imiquimod塗布開始8週後には脾臓で増加しており、血清中の抗ds-DNA抗体の出現や、糸球体腎炎の発症と平行して動いており、このモデルマウスにおける濾胞ヘルパーT細胞の重要性を確認することができたことは、本研究の推進において大きな意味を持った。本研究ではSLEの発症における濾胞ヘルパーT細胞の役割に着目しており、今後はSLE発症において経時的な濾胞ヘルパーT細胞における発現遺伝子の解析やその体内動態などの詳細な解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は全身性エリテマトーデス(SLE)のマウスモデルであるImiquimod-induced lupusにおける濾胞ヘルパーT細胞の重要性を確認することができた。本研究では濾胞ヘルパーT細胞の分化に必須な分子であるAchaete-scute homologue 2 (Ascl2)のSLE発症における役割に着目しており、今後はCD4特異的なAscl2欠損マウスを用いて、Imiquimod-induced lupusの病態解析や脾臓での濾胞ヘルパーT細胞の増加や胚中心の形成、血清中の抗ds-DNA抗体の測定などを行い、さらに経時的な濾胞ヘルパーT細胞における発現遺伝子の解析やその体内動態などの詳細な解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、予定していたImiquimod-induced lupusにおけるCD4陽性T細胞の遺伝子解析の実験が行えず、166,452円の次年度使用額が発生した。これらは来年度分で行う当該実験の費用にあてる予定である。
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