近年、抗原刺激時の抗体産生に重要な役割を果たしている濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)が全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に深く関与していることが報告された。本研究者はこれまでに、basic-helix-loop-helix転写因子群のひとつであるAchaete-scute homologue 2 (Ascl2)がatypical IkappaBファミリーであるInhibitor kappaBNS (IkBNS)の発現誘導を介してTfh細胞分化に重要な役割を果たしていることを見出している(J Allergy Clin Immunol. 掲載決定済み 2016)が、SLE発症におけるCD4陽性T細胞に発現するAscl2の役割は依然不明である。本申請研究では、CD4陽性T細胞に発現するAscl2によるSLE発症の分子メカニズムを明らかにし、Ascl2、或はその標的分子をターゲットとしたSLEの新規治療法開発に向けた基盤を確立することを目的とした。 ここまで、本研究者はCD4陽性T細胞特異的Ascl2欠損マウスを樹立し、このマウスを用いて、近年確立された新しいループスモデルマウスであるイミキモド誘導性ループスを惹起し、脾臓でのTfh細胞分化を確認した。実験としては、CD4-CreマウスにAscl2floxマウスを交配してCD4陽性T細胞特異的Ascl2欠損マウスを樹立し、このマウスとコントロールマウスの耳介に週3回イミキモドクリームを塗布してヒトループス様症状を惹起した。Tfh細胞はイミキモドクリーム塗布開始4週後のマウス脾臓採取し、フローサイトメトリーにより解析した。CXCR5陽性PD1陽性のCD4陽性T細胞をTfh細胞として解析したところ、CD4陽性T細胞特異的Ascl2欠損マウスでは、コントロールマウスに比してTfh細胞の分化が障害されていた。
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