研究課題
induced pluripotent stem(iPS)細胞を用いた全身性エリテマトーデス(SLE)の病態解明及び新規治療標的の開発を目的として研究を継続した。SLE姉妹例より樹立したiPS細胞から分化させたCD123+樹状細胞は、健常人株と比較して、核酸刺激に対してI型IFN高産生であった。SLE患者由来株のwhole exome sequenceの結果、IFN pathwayに関連する複数の遺伝子においてアミノ酸置換を生じる変異が同定された。これらの遺伝子変異についてセルラインを用いた機能解析を行ったところ、OASLの機能獲得型変異が同定された。更にSLE患者由来iPS細胞にゲノム編集を行い、OASL変異を野生型に戻したところ、IFN産生能が低下した。現在、複数のiPS細胞株にて再現性を確認しており、またin vitroにおける核酸結合能等のOASL変異型の機能解析を進めている。この結果より、SLEの発症にかかわる新たな遺伝子変異の同定ならびに新規治療標的としてのOASLの可能性が示唆された。PADI4 KOマウスにおけるimiquimod(IMQ)塗布SLEモデルでは、腎臓への好中球遊走低下がみられた。細胞株におけるPADI4 Chip-chipのデータより、PADI4の標的としてSPAG9が同定された。PADI4 KO好中球ではSPAG9の発現が低下しており、SPAG9ヘテロ欠損好中球ではp38 MAPKリン酸化の低下、ICAM1へのadhesionの低下がみられた。これらの解析結果からはPADI4はSPAG9-p38 MAPKを介して好中球接着能を制御していることが明らかとなり、これらの系がSLEの新規治療標的となる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
iPS細胞、PADI4欠損マウス解析の両プロジェクトにつき、新規の知見を見出すことができ、現在論文投稿準備中となっている。
iPS細胞については、効率的なゲノム編集が可能となっており、SLEに関連する新たな複数の遺伝子変異候補についてゲノム編集を行い機能解析につなげる予定である。
出張旅費に関する支出を他財源より支出したため残額が発生した。引き続き本年度の出張経費として必要額の使用を予定する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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