研究課題
応募者は、2013年、379例の全ゲノム関連解析によりIL12B遺伝子領域のSNP rs6871626が高安動脈炎の発症と相関すること(p=1.7×10-13)、同SNPは臨床症状とも相関することを報告した(寺尾, Am J Hum Genet, 2013)。そこで、高安動脈炎患者の血漿・血球を用い、患者をIL12B SNPリスク型保有者と非保有者の2群に層別化し表現型を比較することにより、IL12B遺伝子の病態への関連を調べた。IL12Bは炎症性サイトカインであるIL-12とIL-23を構成するp40をコードする。高安動脈炎患者および健常者から血漿を採取し、p40、IL-12、IL-23の濃度を比較したところ、高安動脈炎患者で健常者よりもp40やIL-12の濃度が有意に高かった。SNP rs6871626がアデニン(A)である場合、シトシン(C)である場合に対して高安動脈炎の発症リスクとなるが、このリスクアレルを持つ患者で持たない患者より血漿中のIL-12の濃度が有意に高かった。次に、これらのサイトカインの主たる産生細胞が単球/マクロファージであることから、高安動脈炎患者や健常者から単球を回収して刺激し、サイトカイン産生能を比較した。その結果、高安動脈炎患者の単球/マクロファージではp40、IL-12の産生能が健常者の単球/マクロファージよりも有意に亢進しており、高安動脈炎患者の中でもリスクアレルを持つ患者において持たない患者よりもp40やIL-12の産生能が有意に高かった。よって、IL12Bのリスクアレルは単球/マクロファージのIL-12の産生量を変化させることで高安動脈炎の病態に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに進捗し、成果の一部を学術論文として発表できたため。
高安動脈炎疾患特異的iPS細胞(=発症リスク型IL12B遺伝子SNPを保有)と健常者iPS細胞を単球/マクロファージに分化誘導し表現型を比較することにより、後天的なエピジェネティクスの影響を排除した状態でIL12B遺伝子の病態への関与を調べる。iPS細胞を単球に分化誘導し、さらに刺激を加えてマクロファージに分化させる実験を行う。次に、高安動脈炎疾患特異的iPS細胞由来の単球/マクロファージと健常者iPS細胞由来の単球/マクロファージのサイトカイン産生能を測定し、比較する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Arthritis Res Ther
巻: 19 ページ: 197
10.1186/s13075-017-1408-8