研究課題
Gal-9は我々が世界で最初に発見した分子であり、その後もアポトーシスや細胞周期との関連で独自の業績を積んでいる。免疫応答に関するGal-9の機能解析の報告はあるものの、現時点でSLEにおける免疫応答と臓器障害についての一定の見解は得られていない。特にGal-9の作用はTim-3に依存する系と独立する系が存在し、かつ各種細胞サブセットにより抗炎症性に働く系と炎症を惹起する系が混在しており、治療効果や副作用を検証する上で、Gal-9 KO疾患モデルでの表現型の検証は必要不可欠である。SLE患者における報告としては、患者血清中におけるガレクチン自己抗体の検出やSLE患者血清におけるGal-9濃度上昇及び末梢血単核球、T細胞におけるTim-3及びGal-9発現亢進などが散見され、疾患活動性との相関も報告されている。動物実験としては、代表的疾患モデルマウスであるMRL/lprマウスに対してGal-9を投与後、Tim-3非依存性に形質細胞のアポトーシスが誘導され、ds-DNA抗体の産生抑制で病勢を改善したとの報告もある。本研究ではSLEにおけるGal-9の病態への関与を解明するため、平成29年度は代表的自然発症SLEモデルマウスであるMRL/lprマウス及び誘導系疾患モデルであるプリスタン投与Balb/cマウス用いて検討した。すなわちGal-9ノックアウトMRL/lprマウスの作出及びBalb/c背景Gal-9欠損マウスへのプリスタン腹腔内投与を行い、表現型の差異を検討した。両モデルとも、dsDNA抗体産生やB細胞分化には差異を認めなかった。腎炎及び関節炎の評価において、MRL/lpr背景マウスではGal-9欠損マウスと正常型マウスで有意な差を認めなかったが、プリスタン投与系では、Gal-9欠損マウスにおいて腎炎及び関節炎の進展が抑制された。プリスタン投与Gal-9ノックアウトBalb/cマウスの表現型の差異は、正常型マウスで認められたプリスタン投与部位におけるlipogranuloma形成が抑制されていることに起因すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
SLEモデル動物のGal-9ノックアウトマウスを樹立し、その表現型を検討した。従って予定通り順調に展開している。
プリスタン投与系で認められるSLEの病態形成へのGal-9シグナルの関与のメカニズムを今後検討する。プリスタン投与後に腹腔内に集積するマクロファージ数、及び腹腔内マクロファージにおけるTLR7-IFN-I系のシグナル伝達経路の検討を行う。さらにlipogranulomaのリンパ濾胞様構造の形成の差異、lipogranulomaにおけるGal-9の発現細胞を検討することによって、lipogranuloma形成へのGal-9の意義を明らかにする。
前年度には前実験の続きから当実験に移行することが出来ているが、脾臓やリンパ節についてFlow Cytometerにて濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh) 及び胚中心B細胞 (GC B cells) の差異についてはまだ十分に検討できていないため、次年度に行う。次年度に腹腔内プリスタン投与後の腹腔内に集積するマクロファージ数、及び腹腔内マクロファージにおけるTLR7-IFN-I系のシグナル伝達経路を解析。各種免疫担当細胞のサブセット解析と免疫チェックポイント分子の発現量の差異を測定するために、サイトカイン測定など網羅的にしていく予定である。
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Arthritis Rheumatol.
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10.1002/art.40467.