Gal-9は我々が最初に発見した分子であり、免疫関連組織や細胞を含む種々の臓器に広く発現している。免疫応答に関するGal-9の機能解析の報告はあるが、現時点で全身性エリテマトーデス(SLE)における免疫応答と臓器障害については不明な点が多い。特にGal-9の作用は細胞表面の受容体であるTim-3に依存する系と独立する系が存在し、かつ各種細胞サブセットにより抗炎症性に働く系と炎症を惹起する系が混在している。SLEの患者血清中におけるGal自己抗体の検出やGal-9濃度上昇等により疾患活動性との相関も報告されている。動物実験では、代表的自然発症SLEモデルのMRL/lprマウスに対してGal-9を投与後、ds-DNA抗体の産生抑制され病勢を改善したとの報告もある。 本研究ではGal-9のSLEへの関与を解明するため、Gal-9ノックアウトMRL/lprマウスの作出及びBalb/c背景Gal-9欠損マウスへのプリスタン腹腔内投与を行い、表現型の差異を検討した。両モデルとも、dsDNA抗体産生やB細胞分化には差異を認めなかった。腎炎及び関節炎の評価において、MRL/lprマウスではGal-9欠損マウスと正常型マウスで有意な差を認めなかったが、プリスタン投与系では、Gal-9欠損マウスにおいて腎炎及び関節炎の進展が抑制された。プリスタン投与Gal-9ノックアウトBalb/cマウスの表現型の差異は、正常型マウスで認められたプリスタン投与部位におけlipogranuloma形成が抑制されていることに起因すると考えられた。プリスタン投与後に腹腔内に集積するマクロファージ数、及び腹腔内マクロファージにおけるTLR7-IFN-I系のシグナル伝達経路は両群で差は認めなかった。 またTim-3抗体投与による明確な効果が得られず、 Galectin-9-Tim-3以外の経路の存在が示唆された。
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