研究課題
【目的】全身性エリテマトーデス(SLE)におけるループス腎炎(LN)は生命予後を規定する重篤な病態である。LNの蛋白尿が出現する機序として、糸球体上皮細胞(ポドサイト)の形態・機能異常に起因する構造蛋白の発現低下が報告されている。SLE患者のCD4陽性T細胞ではSignaling lymphocyte activation molecule family 6 (SLAMF6) の発現が亢進し、IL-17産生に関与していることが報告されている。今回、我々はSLAMF6に着目し、LNにおけるポドサイトの機能的意義を検討した。【方法】健常人とLN患者及びB6マウスとMRL/lprマウスの腎組織を用いてポドサイトマーカーであるnephrinとSLAMF6の共発現を検討した。またB6マウスとMRL/ lprマウスのポドサイトと腎臓、脾臓由来のCD4+Tリンパ球におけるSLAMF6発現をフローサイトメーターで解析した。更にヒトポドサイトを健常人及びLN患者由来のIgGとインキュベートし、real-time PCRを用いてSLAMF6の発現を検討した。【結果】LN患者及びMRL/lprマウスの腎組織では、対照群と比較してnephrin陽性細胞におけるSLAMF6の発現が強く認められた。またポドサイトと腎臓、脾臓由来のCD4+Tリンパ球で、対照群に比して、SLAMF6の発現が亢進していた。更にヒトポドサイトではLN患者IgGによるSLAMF6 mRNA発現誘導が確認された。【結論】LNのポドサイトではSLAMF6発現が亢進しており、CD4+Tリンパ球と協同して、機能異常に寄与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
仮説として挙げていたSLEモデルマウスMRL/lprにおける脾臓および腎臓のSLAMF6発現がコントロール群と比較して、亢進していたことを確認できた。またセルソーターにて腎臓のポドサイトの単離を行っているが、その条件設定が完了し、今後の細胞分収後の実験計画を立てることが可能になった。
コントロールマウスおよびMRL/lprマウスから分収したポドサイトを用いたマイクロアレイ解析を行う。またin vitroの実験系ではマウスのprimaryポドサイトを用いて、抗SLAMF6抗体とインキュベートし、nephrinシグナルとの関連についても検討を行う。ポドサイトにおけるSLAMF6発現をsi-RNAを用いてノックダウンし、in vitroのレベルでcell survival markerの回復が認められるかどうかについても確認する。これらの実験系はProf. George C. Tsokos (Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston)らのグループと連携しながら進めていく予定である。次にC57BL/6バックグランドSLAMF6ノックアウトマウスを入手し(The Jackson laboratoryで入手可能)、MRL/lprマウスをバックグラウンドとして、8-10世代までバッククロスを行う。そのマウスを用いて、蛋白尿の推移、発症前(6週齢前後)、発症後(12-16週齢)の腎組織変化を検討したいと考えている。同時にCD4+リンパ球の活性化、Th17細胞の分化能などの免疫担当細胞の機能についても検討したい。さらにMRL/MPJ, MRL/lpr, MRL/lpr.SLAMF6-/-の各マウスの腎組織において、ポドサイトマーカーであるnephrin、podocinなどの発現を検討する。
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