研究課題/領域番号 |
17K09980
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山本 元久 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80404599)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | IgG4関連疾患 / 臨床病期 / IL-5 |
研究実績の概要 |
本研究では、札幌医科大学附属病院に通院しているIgG4関連疾患の患者を対象に、IgG4関連疾患の暫定的な臨床病期を設定し、それに応じた治療法の開発を目指している。その背景として、現在、IgG4関連疾患に対しては、画一的に中等量のステロイド薬が寛解導入療法の第一選択薬として使用されている。しかし臨床的には、病変が頭頸部にとどまるミクリッツ型(涙腺・唾液腺炎)から、膵炎(自己免疫性膵炎)、腎炎(IgG4関連腎臓病)、後腹膜線維症などのように他臓器にまで病変が拡大している症例(全身型)もみられ、臨床病型はかなり多様であることがわかっている。また治療アウトカムもステロイド薬を休薬できる症例から、再燃を繰り返す症例まで様々である。これらの結果を踏まえ、IgG4関連疾患においても個別化医療、さらには精密医療を目指して行かなければならないと考える。本研究では、上記のミクリッツ型と全身型を中心に、本疾患に臨床病期を設定し、治療前の各種サイトカイン濃度を測定し、病期の進行に伴う血清サイトカインの変動を解析した。その結果、現時点までに病態の進行とともに血清中のサイトカイン環境が大きく変化することが明らかになった。血清IgG4値がまだ上昇を示さない時期にはIL-4やIL-13は検出されないが、血清IgG4濃度の上昇とともに検出されるようになる。ミクリッツ型ではMCP-1濃度が高値を示すが、全身型に移行するに従って、IL-6やTGFβが高値を示すようになる。一連の病態の進行とともにIL-5濃度は上昇していくことが判明した。これらの結果は、今後、各病期における治療の最適化に繋がる可能性を有している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標の一つである設定した各病期における治療前サイトカイン濃度のチャートレーダーは完成した。昨年度までの組織学的な解析の遅れを取り戻し、現在、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析が進行している。また昨年度に見出されたIL-5産生のソースの一つとしてST2陽性T細胞が確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
完成したチャートレーダー、DNAマイクロアレイの結果を基盤に、治療標的となり得るサイトカインおよびその制御分子の探索を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
顎下腺組織を使用した遺伝子検索(DNAマイクロアレイ)を継続し、各病期における治療の最適化を、次年度も進めていく予定である。
|