研究課題
免疫疾患は、自己免疫/自己炎症の病態に占める比率により再分類されており、これまで自己免疫疾患と考えられてきた疾患の一部は、現在、自己炎症疾患であることがわかっている。自己炎症疾患の中でも、疾患の発症メカニズムで最も多いのはインフラマソーム機能異常症である。インフラマソームは、パターン認識受容体であるNOD様レセプター(NLR)とアダプター分子であるASCとカスパーゼ1からなる蛋白複合体である。インフラマソームは内因性のストレス分子により活性化され、最終的に活性化されたカスパーゼ1によりIL-1βの前駆体が活性型IL-1βに変換されて自己炎症が誘導される。従って、自己炎症疾患を識別できるサイトカイン(signature cytokine)はインフラマソームで活性化されるIL-1β、IL-18などのサイトカインである。このインフラマソームで活性化されるIL-1β、IL-18を検出する方法を確立することで、自己免疫疾患/自己炎症疾患を識別することが可能である。本研究では、自己炎症疾患に特異的なsignature cytokineである活性型IL-1β、活性型IL-18を測定系を確立させ、患者血清などの生体試料を用い両疾患を鑑別するシンプルなアッセイ系を確立することである。具体的には、自己炎症疾患として成人発症スティル病(AOSD)、自己免疫疾患としてSLE、関節リウマチ(RA)患者血清を用い、活性型IL-1β、IL-18を測定する技術を確立させ、免疫疾患を自己炎症/自己免疫のベクトルで再分類する方法を確立することにある。
2: おおむね順調に進展している
炎症性サイトカインであるIL-18は、IL-1βと同様にインフラマソームの活性化によりカスパーゼ1で切断され活性型IL-1βに変換され、炎症が諾起される。申請者らは、IL-18の全長に対する抗体とカスパーゼで切断されたIL-18のN末端を認識する抗体を作製した。この二つのモノクローナル抗体を用いることが活性型IL-18を特異的に検出する方法を確立し、AOSD患者で活性型IL-18が特異的に検出されることを明らかにした。さらに、AOSD患者のゲノム解析で血清アミロイドA(SAA)のプロモーター領域の遺伝子多型-13C/TにおいてAOSD患者ではTアリルの頻度が高いことを明らかにした。SAAは、インフラマソームを活性化させる内因性の生理分子であり、-13Tアリルはアミロイド原性に関わることが知られており、日本人におけるAAアミロイドーシスのリスク因子であることが示されている。今年度の研究成果により、自己炎症疾患はインフラマソーム活性化に関わる分子の遺伝子多型で発症リスクが異なることを明らかにした。さらに、自己炎症疾患のsignature cytokineであり、活動性を反映するバイオマーカーである活性型IL-18の測定系を確立した。
自己炎症疾患である若年性特発性関節炎、自己炎症病態が考えられる血球貪食症候群、マクロファージ活性化症候群で活性型IL-18を測定すると同時に自己免疫疾患であるSLE、RAなどの疾患でも測定し、自己炎症疾患/自己免疫疾患を識別できるか明らかにする。
今年度は、実験系を確立するためのリサーチ(文献検索)や実験技術の確立に時間を要したため、研究費の支出がやや少なくなったが、実験系が稼働して来た来年度には多くの研究試薬が必要になると考えている。
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Medicine (Baltimore)
巻: 97(49) ページ: e13394
10.1097/MD.0000000000013394