研究課題
ベーチェット病(B病)は経過中の症状の組合せで診断され、その臨床像は皮膚粘膜症状主体の比較的軽症例から眼病変、神経症状、血管症状、腸管症状など重篤臓器障害を来す例まで多様であるが、症状の出現パターンは必ずしもランダムでなく、一定の傾向がある。本研究で臨床症状、発症年齢、性別にHLA-B51を加えた比較的単純な臨床情報による亜群分類を試み、さらに、各亜群と疾患感受性遺伝子との関連を解析する。本年度は臨床像の焦点を当て、2003~14年の9045例のベーチェット病(B病)の臨床調査個人票新規申請データを用いて解析した。まず、各症状の関連解析では、眼病変が男性、陰部潰瘍なし、腸管病変なしなど、いくつかの症状の出現パターンがあることが示唆された。症状の出現頻度を年齢、性別ごとに解析した結果、眼病変、HLA-B51陽性、針反応は若年者で男性優位だが、加齢につれ男女差が消失すること、皮膚症状、女性の陰部潰瘍、男性の副睾丸炎は性成熟期に高頻度になること、そのほか関節炎、血管病変、腸管病変、神経病変などの副症状は加齢とともに頻度が増加することなどが明らかになった。さらに、多重対応分析または数量化Ⅲ類解析では、①男性、眼症状、HLA-B51陽性、中枢神経病変、②女性、外陰部潰瘍、発症年齢(30歳未満)、③発症年齢(30~39歳)、皮膚症状(+)、関節炎(+)であった。691例の自験例の解析でもほぼ同様の結果が確認されつつある。以上の結果は、B病臨床像に亜群が存在し、各亜群の症状発現に遺伝素因や環境因子が関与するという研究前の仮説を支持するものである。
2: おおむね順調に進展している
2003~14年の9045例のベーチェット病(B病)の臨床調査個人票新規申請データより3213例を週出し、各症状との関連を検討した結果、眼病変を有する患者は男性に多く、陰部潰瘍、腸管病変の頻度が有意に少ないことなど、症状の出現に一定のパターンがあることが示唆された。B病の病因は不明であるが、その発症には遺伝素因と環境因子の双方が関与すると考えられている。一般に遺伝素因の影響が強いほど若年発症となり、高齢者ほど環境因子の暴露が蓄積してくる。また、年齢別の男女差を検討することで、性ホルモンの影響も推測される。従って、年齢、性別の相違が症状の出現パターンと関連している可能性ある。そこで、上記のデータベースよりIRT-ICBD国際分類基準を満たす6627例(男2651例、女3976例、年齢39才[IQR 31-50才]、罹病期間1年[0-4年])を対象に登録時の症状と年齢と性別との関連を解析した。その結果、いくつかのパターンに分けられた。眼病変、HLA-B51陽性、針反応は若年者で男性優位だが、加齢につれ男女差が消失すること、皮膚症状、女性の陰部潰瘍、男性の副睾丸炎は性成熟期に高頻度になること、そのほか関節炎、血管病変、腸管病変、神経病変などの副症状は加齢とともに頻度が増加することなどが明らかになった。さらに、ベーチェット病の臨床調査個人票新規申請データより解析可能な7024例を対象に多重対応分析または数量化Ⅲ類を用いて検討した結果、男性、眼症状の群、女性、皮膚粘膜症状、関節症状の群が抽出された。さらに、針反応とHLA-B51を含めた分析(対象数2218例)では、①男性、眼症状、HLA-B51陽性、中枢神経病変、②女性、外陰部潰瘍、発症年齢(30歳未満)、③発症年齢(30~39歳)、皮膚症状(+)、関節炎(+)であった。691例の自験例の解析でもほぼ同様の結果が確認されつつある。
本年度の研究でも用いたベーチェット病(B病)の臨床調査個人票新規申請データの解析を中心に、さらに詳細に検討する。また、現在、共同研究施の日本医大付属病院、日本医大武蔵小杉病院、横浜市立大学付属病院で自験例のコホートを立ち上げており、これを対象として多重対応分析または数量化Ⅲ類による亜群分類を試み、実臨床で検証するとともに、治療の影響、臨床経過に伴う群間移行の有無、発症年代による相違などを検討する。また、次のステップである臨床亜群における遺伝素因の解析に向けて準備を行う。
研究計画で学内倫理委員会審査が必要な事項があり、その審査準備が遅れ、研究計画に若干の遅延しているため。
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