研究実績の概要 |
代表的な自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)においては、DNAメチル化異常が滑膜の攻撃的な表現型に関与することが示唆されている。申請者らはこれまでに、慢性炎症刺激がDNA脱メチル化酵素であるTet3の発現を増強し、滑膜の攻撃的な表現型への変化を誘発すること、Tet3の阻害が関節破壊を強力に抑制することを明らかにしてきたが、治療応用にはTet3の発現調節機構の詳細を解明する必要がある。申請者らの予備的検討により、TNFやIL-1はNFkB依存性にTET3 mRNAの発現を誘導するが、Tet3タンパクの分解を強く抑制することでTet3タンパクの発現が顕著に増強することが明らかとなった。一方で、O-linked N-acetylglucosamine (O-GlcNAc)は、O-GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT)によってセリン/スレオニンに付加され、同部位に起こるリン酸化と拮抗し、タンパクのユビキチン化を阻害する。Tet2/3のタンパクにはO-GlcNAcサイトが多く存在し、OGTによるO-GlcNAc化がユビキチン化を阻害することを報告される(JBC 2015,290;4801-4812)が、 申請者らはFLSにおいてTNF刺激によりこのOGTも発現が誘導されることを確認した。 現在、患者由来滑膜組織・培養滑膜細胞におけるO-GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT)の発現、O-GlcNAc 化の状態、炎症性サイトカインによる誘導とその発現調節機構を確認中である。今後、Tet3依存性の滑膜細胞の表現型変化におけるO-GlcNAc化の関与を明らかにし、治療抵抗性RAに対するエピゲノム創薬に展開する予定である。
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