研究実績の概要 |
代表的な自己免疫疾患である関節リウマチ(RA)においては、DNAメチル化異常が滑膜の攻撃的な表現型に関与することが示唆されている。申請者らはRA患者の滑膜でTET3と5-hydroxymethylcytosine (5hmC)の有意な発現を検出し、さらにTET3はRA患者から得られた培養fibroblast-like synoviocytes (FLS)において、tumor necrosis factor (TNFα)のような炎症性サイトカインによって誘導されることを発見した。培養FLSにおいて、siRNAを用いTET3をノックダウンし、TNFαの刺激の有無で遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイで網羅的に解析したところ、TET3の介在を要するTNF誘導性の遺伝子として、好中球の遊走に関与するCXCL8, CXCL5などのCXC- chemokine、MYOCD, CNN1, ITGB3などのmigrationに関与する遺伝子、LIFやIL1Bなど炎症をさらに増幅させうる遺伝子、KIT, RELB Proto-Oncogene, RELBなどのproto-oncogenes、IFI44LやOAS1, RSAD2などのIFN-inducible genes、TNFAIP3やFADS2などのRA risk SNP genesの他、NEFM, SCG2, NTRK3などの神経系に関与する遺伝子が見つかった。一方で、血清誘発性関節炎マウスモデルでは、TET3のハプロ不全によりパンヌス形成と破骨細胞を介した関節破壊が抑止された。これらの結果は、RAの病態形成におけるTET3の新たな役割を示した。TET3は、RA病態形成において”Inflammatory memory”を促進し、epigenetic regulatorとしてパンヌス形成に中心的に関与していることが示唆された。
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