研究課題/領域番号 |
17K09993
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
竹田 正秀 秋田大学, 医学系研究科, 講師 (30466594)
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研究分担者 |
植木 重治 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (60361234)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 難治性喘息 / 粘液産生 / PI3Kγ / 好酸球 / ETsis |
研究実績の概要 |
ヒト気道上皮細胞株、NCI-H292を用いて、PI3Kγが気道上皮細胞からの粘液産生に関与するかを検討した。粘液産生に重要なMUC5AC産生について、EGFを刺激因子として、EGF刺激前にPI3Kγの選択的阻害薬であるAS605240で前処理を行い、RT-PCRによって、MUC5AC発現の影響を検討した。結果として、EGFによって誘導されるMUC5ACの発現は、AS605240の濃度依存性に抑制される結果を得た。 気道上皮細胞から産生される、GM-CSFやIL-8は、気道上皮細胞に作用しMUC5AC産生に関わることが知られている。次に、eotaxinにより誘導される、GM-CSF、IL-8産生におけるPI3Kγの関与についてELISA法を用いて検討を行った。その結果、eotaxinによって誘導される気道上皮細胞株からのサイトカイン産生をPI3Kγ選択的阻害薬は濃度依存性に抑制することが観察された。以上の結果により、PI3Kγは気道上皮細胞株からのMUC5AC産生やサイトカイン産生を制御することで粘液産生に関わることが示唆された。 次に、好酸球のETosisにおけるPI3Kγの関与について検討した。IgA、IgGコーティングプレートを用いて好酸球を刺激しETosisを誘導する系において、AS605240を好酸球に前処理することで、好酸球ETosisの誘導ならびにDNA trapsの誘導を抑制させることが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも記載したように、ヒト気道上皮細胞株を用いた実験において、MUC5AC発現ならびにサイトカイン産生においてPI3Kγが重要な役割を果たしていることを示唆する実験結果を得ている。しかし、MUC5AC発現やサイトカイン産生に関わるメカニズムの検討としてのシグナル経路のリン酸化についての解析がまだ行えていない。好酸球のETosisに対するPI3Kγの関わりについては、共焦点観察による検討は行っているが、SYTOXを用いた、分離好酸球からの活性酸素測定の実験がまだ十分ではなく、追加の実験を予定している。 2020年度は以上の研究も含め実施を行い、社会的情勢の推移に注意を払いながら、主に国内での学会発表で研究成果を広く発信していきたい。加えて英文雑誌へ研究成果の投稿も行い、国内外に研究成果を発信していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
気道上皮細胞株を用いた研究においては、EGFによるMUC5AC発現、eotaxinによるGM-CSF、IL-8産生におけるPI3Kγの関与について、ERK、MAPK、p38などのシグナル経路のリン酸化の状態について検討を加え、メカニズムの解析をすすめていく予定である。 また、好酸球ETosisにおけるPI3Kγの関与については、共焦点観察の研究は既に終えているが、SYTOXを用いた活性酸素測定などの実験を追加し、解析を行っていく方策である。 これまでに得られた、実験結果を含めて今回得られた研究成果については、新型コロナウイルス感染症の感染状況などの社会情勢をみて判断する必要があるが、主に国内学会や研究会で研究成果を発表を行うことを考えている。加えて英文雑誌への投稿をすすめ、研究成果を国内外に広く発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
気道上皮細胞株のシグナル経路解析や好酸球ETosisについて活性酸素測定が行えておらず、次年度使用額が生じた。また、特に英文雑誌への論文投稿が行えておらず、英文投稿に関わる費用について次年度使用額が生じた。 2020年度は、気道上皮細胞株のシグナル経路解析や好酸球の活性酸素測定など、追加の実験に対する経費としてあてたい。加えて2020年度は研究成果を英文雑誌に投稿し、研究成果を国内外に広く発信していきたいと考えている。学会や研究会での発表も含め成果報告の費用として研究費を使用したい。
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