研究課題
難治性喘息の病型のひとつとして、気道上皮細胞における杯細胞の過形成や粘液産生機構が関与していることが報告されている。ヒト気道上皮細胞株、NCI-H292を用いて、細胞の分化・生存・活性化などに関わるPI3Kγが気道上皮細胞からの粘液産生に関与するかを検討した。2017年度はEGF刺激による気道上皮細胞株からのMUC5AC産生をPI3Kγ選択的阻害薬が抑制しうるかを検討し、PI3Kγ選択的阻害薬AS605240がMUC5AC産生を有意に抑制するという知見を得た。2018年度、2019年度は、気道上皮細胞株をeotaxinで刺激し、気道上皮細胞株からのMUC5AC産生をAS605240が有意に抑制するという知見を得た。また、粘液産生に関わるサイトカインであるIL-8、GM-CSF産生に対してAS605240が抑制的に作用することを見出したほか、AS605240の好酸球ETosisに対する影響も検討を開始した。2019年度から2021年度にかけては、IgA、IgGコーティングプレートで刺激・誘導した好酸球ETosisに対して、AS605240の前処理により、好酸球ETosisの誘導を抑制させることを観察した。好酸球ETosisについては、ETosisによりDNA Trapsが放出され、DNA Trapsが分泌物の粘性に関わることが報告されている。AS605240により好酸球ETosisの誘導を抑制することは、MUC5AC産生抑制以外の経路で、難治性喘息患者の分泌物の粘性についても抑制的に働く可能性がある。以上の研究により、気道上皮からのMUC5ACを中心とした粘液産生機構や、気道上皮周囲で起こるであろう好酸球の活性化によるETosisからの分泌物の粘性に対してPI3Kγ選択的阻害薬が抑制的に働くことを見出した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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