研究実績の概要 |
自己免疫疾患の発症には、免疫寛容の破綻による自己反応性T細胞の活性化が関与する。自己免疫応答には、IL-17,IL-21,GM-CSFを産生し自己免疫疾患を惹起するTh17細胞と抑制性に機能する制御性T細胞との分化バランスが深く関与しており、IL-21はTh17細胞の自己増殖因子として機能し、また濾胞ヘルパーT細胞から も産生され、B細胞の形質細胞への分化、自己抗体の産生を誘導するとともに、CD8陽性T細胞にも直接作用し、細胞傷害性の増強に関与している。本研究者は炎 症性筋疾患患者の血清IL-21濃度が、健常者と比して有意に上昇していていることを見出した。しかしながら、IL-21の自己免疫性筋炎の発症における役割はいまだ不明であった。そこで本研究者は実験的自己免疫性筋炎の発症におけるIL-21の役割を解析した。その結果、IL-21欠損マウスは野生型マウスに比して、筋力低下が有意に改善し、筋肉への浸潤細胞はCD11b陽性の骨髄球系細胞および好中球が有意に低下していた。さらに炎症性サイトカインの網羅的な解析では、GM-CSF の産生がIL-21欠損マウスで有意に低下しており、特にγδT細胞からのGM-CSFの産生が著しく低下していることを見出した。筋肉に浸潤するγδT細胞のTCRレパ トワの解析では、GM-CSFの主要な産生細胞はVγ4陽性Vδ4陽性のγδT細胞であり、ケモカイン受容体の解析ではCCR3, CCR6, CCR8, CXCR4, およびCX3CR1が高発 現であった。特に、IL-21欠損マウスの筋浸潤γδT細胞のCX3CR1の発現は野生型マウスと比較して有意に低下していた。これらの結果、IL-21はCX3CR1陽性Vγ4 陽性Vδ4陽性γδT細胞の筋への浸潤を増強することにより自己免疫性筋炎の発症に関わっていることが示唆された。
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