研究課題
FPR2 陽性ヘルパーT 細胞の機能解析について:健常人10例および関節リウマチ(RA)患者20例で検討を行った。結果として、末梢血単核球(PBMC)由来FPR2+CD4+T細胞は、ごく少数であった。本検討でのRA患者は高疾患活動性症例が少ないという限定はあるが、臨床的活動性との相関はみられなかった。いっぽう、赤血球沈降速度がFPR2陽性T細胞が発現しているRA症例でやや高値である傾向を認めた。以上より、末梢血由来のCD4+ T細胞では、FPR2の発現は炎症の活動性が高い患者以外にはほぼ認めなかったと考えられた。そこで、活性化状態のCD4+ T細胞でFPR2が発現しているのではないかと考え、RA患者由来PBMCをTh1条件、Th17条件へ分化させ、FPR2陽性細胞の発現を検討したが、特にナイーブT細胞(Th0)から分化誘導を施した場合にはFPR2発現を認めることは無かった。一方、T細胞にFPR2のリガンドであるResolvin D1 (RvD1)を添加したin vitroでの検討では、Resolvin D1がインターフェロンγの分泌を抑制することが確認された。また、上記の結果を踏まえ、今年度はFPR2 強制発現T 細胞の作成は保留した。破骨細胞分化におけるFPR2 の影響について:マウスマクロファージ細胞株であるRAW 264.7 細胞を用いてRANKL, M-CSFで刺激を行い破骨細胞様多核細胞への分化を試みたが、十分な多核巨細胞を得られることができなかった。また、FPR2 遺伝子挿入プラスミドベクターRAW細胞に遺伝子導入をさせて蛋白の強制発現を施した。遺伝子導入の可否はウエスタンブロット法により確認した。
4: 遅れている
FPR2 陽性ヘルパーT 細胞の機能解析について:ヒトT細胞におけるFPR2は予想以上に発現量が少なく、研究を発展させることが困難であった。また、RA患者からの血液検体について、予想よりも回収可能であった患者数が少なかったことも研究が滞った要因の一つと考えられる。これらの結果を踏まえ、FPR2の遺伝子導入実験は一時保留することとした。破骨細胞分化におけるFPR2 の影響について:RAW264.7細胞から破骨細胞への誘導が困難であった原因として、仔牛由来血清の品質やRAW細胞の状態、培養器の品質状況などが疑われたが、明確な理由は明らかにできなかった。
FPR2 陽性ヘルパーT 細胞の機能解析について:FPR2受容体からのシグナルは、多核白血球およびマクロファージにおいては炎症収束機能を有することから、制御性T細胞(Treg)においてFPR2受容体の発現が増加する可能性が考えられる。今後、TGF-betaやIL-10で誘導されたFoxP3陽性T細胞におけるFPR2発現量を評価する予定である。また、RA患者におけるT細胞をそのまま解析するのではなく、Tregへの誘導を行った後のFPR2発現を観察する予定とする。破骨細胞分化におけるFPR2 の影響について:マウス骨髄由来の単球を用いて破骨細胞への誘導を行った上で、FPR2の発現量やRvD1添加による分化への影響について検討する。その他の追加検討について:平成27年度、28年度で検討した血漿脂質分析について、脂質メディエーターとRAの活動性との関連性について再現性を得るための検討を計画している。また、コラーゲン誘導関節炎(CIA)を生じたマウスにおけるFPR2陽性T細胞の発現量を検討する予定である。
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