研究課題/領域番号 |
17K10001
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水井 理之 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30423106)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | T細胞受容体発現 / 断片化抗CD3抗体 |
研究実績の概要 |
断片化抗CD3抗体(anti-CD3e F(ab’)2)をマウスに投与することにより、T細胞を除去することなくTCR発現を低下させることができ、抗体産生反応を減弱させることができることを確認しているが、自己免疫疾患等へ治療効果があるかどうかを目的として、疾患発症後10週齢のMRL/lprマウスに抗体を20 および100 microg/bodyを3日毎に投与した。その結果、100 microg/body投与群においてのみ、CD4陽性T細胞とCD4-CD8-T細胞でのTCR発現量は低下した。しかし、同時に活性化マーカーであるCD69発現がCD4,CD8にて著明に増加していた。懸案であるTregの増加については、今回では明らかな増加は認められなかった。さらに、2週間の投与では、MRL/lprマウスの自己免疫疾患の軽減は明らかではなかった。これらの結果は、断片化CD3抗体においては、TCR発現は低下させうるものの、同時にT細胞に軽度の刺激が入ることにより、免疫反応低下が相殺されていることが考えられた。断片化抗CD3抗体は、疾患発症後に投与した場合には効果は減弱してしまう可能性は否定できない。今後、自己免疫疾患発症前から長期投与した場合に、予後は如何に変化するかを検討する予定である。さらに、TCRを低下させるためには高濃度の断片化抗体を頻回投与することが必要となり、これはあまり実際的ではない。最近では、抗体を改変して半減期を延長した抗体や、Fc部分の糖鎖修飾を改変することによって免疫活性を起こさない抗体等が作成可能となってきており、市販されているものもあるため、それらの可能性についても今後検討していく予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗CD3抗体のTCR減少効果が少ないことと、軽度の免疫活性化作用を有することで、正しい治療効果が十分に得られない可能性も出てきているため、今後より副作用の少ない抗体を選択する必要性が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
抗体技術の進歩により、最近ではFc部分を改変して、抗体関連細胞障害反応や補体賦活化反応をなくした、いわゆるSilent抗体や、エンドサイトーシスされた抗体をうまく再利用するために改変されたリサイクリング抗体も開発されてきている。このような抗体を利用してTCR発現調節を行うことによって、自己免疫疾患治療につながるかどうか、今後検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が予測通りの結果でない部分があり、その原因究明のため進歩が当初予定より遅れている。そのため次年度使用額が生じている。
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