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2017 年度 実施状況報告書

関節リウマチの病態と腸内細菌叢との関連性の解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K10002
研究機関大阪大学

研究代表者

楢崎 雅司  大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00467573)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード関節リウマチ / 腸内細菌叢
研究実績の概要

近年シーケンス技術の向上により腸内細菌を培養せず、16Sリボソームを解析することによって腸内細菌叢を網羅的に同定することが可能になった。これまで腸内細菌叢と代謝性疾患や炎症性腸疾患などとの関連が検討され腸内細菌叢の変化(dysbiosis)が報告されてきた。しかし、免疫疾患に関する解析報告はまだ数が少ない。研究代表者らは関節リウマチ患者の腸内細菌叢を解析し、健康人と比べて関節リウマチ患者の腸内細菌叢にはPrevotella copri(P.copri)菌が増加し、Bifidobacteriumが減少している患者がいることを明らかにしてきた。こうしたdysbiosisが関節リウマチに罹患した事に由来するのか、関節リウマチを引き起こす原因に関与しているのかは明らかにしなければならない重要な議論である。これまで関節リウマチ患者のP. copri菌を含む便を関節炎モデルマウスに経口投与させてマウスの大腸に定着させると、健康人の便を定着させたマウスと比べて関節炎が増悪することを示し、P. copri菌が関節リウマチを引き起こす環境因子ではないかと提唱した(Maeda Y et al., Arthritis Rheumatol. 68(11):2646-2661. 2016)。
次に臨床現場で確認しなければならないことは、P.copri菌と治療によって関節リウマチが低活動性~寛解状態になった場合のP.copri菌の菌量との関連、drug free寛解まで到達した患者での同菌の変化、関節リウマチの臨床症状、間質性肺炎などの関節外病変との関連など検討し、P.copri菌が実際の関節リウマチ患者の病歴においてどのように相関しているのかを解析し、さらに炎症環境を誘導する機構を明らかにして行くことが重要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2010年ACR/EULAR関節リウマチ分類基準を満たす患者で、新規発症時、治療し疾患活動性が低下した後、再燃時など、複数回便の供与を頂き、凍結保存とともにmRNAを抽出保存し集積している。同時に検体採取時に性別、喫煙歴、発症年齢、罹病期間、疾患活動性、CRPや血沈などの炎症マーカー、リウマトイド因子や抗CCP抗体などの自己抗体力価、関節破壊ステージ分類、治療内容などの臨床情報を集積している。

今後の研究の推進方策

関節リウマチの治療前後での腸内細菌叢に変化が生じるかを検討する。抗菌作用を持つサラゾスルファピリジンの関節リウマチへの有効性は1950年頃から指摘されているがその作用機構は明確ではない。同薬剤で寛解あるいは疾患活動性が低下している関節リウマチ患者が一定の割合で存在するが、そうした患者では腸内細菌叢の病態への関与が想定され、有効性の基盤に腸内細菌叢の変化が存在するか検討していく。また、関節リウマチの治療はメソトレキセートが基本となるが、治療によって関節リウマチが寛解した場合と活動性が残る場合で、P. copriの菌量に変化がないか解析する。寛解に到達したあと、投薬を中止すると殆どの患者で関節リウマチが再発するが、再発しない例も1~2割存在する。再発する患者と再発しない患者で腸内細菌叢の変化を観察する。このような腸内細菌の解析によって関節リウマチの寛解予測やdrug free寛解予測に寄与できないか検討する。
関節リウマチ患者が炎症をおこしやすい腸内細菌叢になっていないかをin vitroで評価できる系の確立を目指す。その系を用いて関節リウマチをはじめ様々な炎症性疾患の患者の腸内細菌叢の炎症誘導能を調べる。これまでマウス骨髄由来の樹状細胞をP. copriを多く含む関節リウマチ患者の加熱処理腸内細菌とともに培養すると、加熱処理した健康人腸内細菌と比べてIL-6やIL-23などの炎症性サイトカインの産生亢進が観察されており、改良した簡便な方法で関節リウマチや炎症性疾患患者の腸内細菌叢が炎症誘導型かそうでないか判断できる測定系を確立していく。

次年度使用額が生じた理由

主に解析に使用する臨床検体の収集を行っており、これまでストックとして有しているいるサンプルチューブやDNA抽出液を使用しているため、消耗品に使用する研究費を使用せずに済ます事ができている。また、腸内細菌叢の解析には一つの資料検体当たり高額な費用がかかるが、ある程度検体が収集された時点で、まとめて解析することを考えており、研究費をそのために繰り越すことに変更している。
培養液やサイトカイン測定キットなど消耗品を多く使用する腸内細菌叢のin vitroでの炎症誘導アッセイ系の検討には費用がかかるが、この実験に取り組めていないことも次年度使用額が生じた結果となったが、早々に取り組んで行く予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] The role and therapeutic targeting of IL-6 in rheumatoid arthritis.2017

    • 著者名/発表者名
      Narazaki M, Tanaka T, Kishimoto T
    • 雑誌名

      Expert Rev Clin Immunol

      巻: 13 ページ: 535-551

    • DOI

      10.1080/1744666X.2017.1295850.

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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