研究課題/領域番号 |
17K10003
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松尾 裕彰 広島大学, 病院(医), 教授 (60346385)
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研究分担者 |
横大路 智治 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 准教授 (70389120)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / エビ / 抗原 / FDEIA |
研究実績の概要 |
エビによる食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)患者における食物運動負荷試験の感度は低い。同様に、現在臨床で実施されるエビ特異IgE抗体検査についても、負荷試験が陽性でありエビFDEIAと確定診断された患者が陰性を示すケースも多い。負荷試験の感度低下の原因は、エビの摂取量や運動負荷量の不足であると考えられている。また、負荷試験や特異IgE抗体検査に用いられるエビの種類の違いによって、検査結果が異なることが示唆されている。本研究では、本邦で食用とされているバナメイエビ、ブラックタイガー、クルマエビ、タイショウエビ中の原因抗原タンパク質を解析することによりエビ種間の抗原の違いを明らかにする。 各種エビのむき身を40 mM Tris-HCl緩衝液(pH 8.0)にてホモジナイズすることにより可溶性エビタンパク質を抽出した。二次元電気泳動にて分離後ニトロセルロース膜に転写し、エビ摂取と運動を組み合わせた負荷試験によりエビFDEIAと確定診断された患者血清とインキュベートした。結合した患者血清IgEを抗ヒトIgE抗体にて検出した結果、バナメイエビの40 kDaおよび70 kDaタンパク質にIgEの結合が認められた。これらのタンパク質を質量分析計にて解析した結果、40 kDaおよび70 kDaタンパク質は、それぞれfructose 1,6-bisphosphonateおよびNesprin-1であることが確認された。 現在、これらの二つの抗原候補の特性を明らかにするために、バナメイエビ可溶性画分から各種カラムクロマトグラフィー(Butyl Sepharose, Hi Trap DEAE FF、YMC-Pack C4など)を使用した精製の条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究において、本研究で使用するエビFDEIA患者の血清IgEがfructose 1,6-bisphosphonateおよびNesprin-1へ結合することが示された。この患者血清は、これらの原因抗原の精製法を確立する研究において、目的タンパク質の特異的検出に使用できるため、精製度の評価に有用であり、効率よく研究を進めることが可能となった。また、エビの種類によってIgEの反応性に違いがみられたことから、各種検査に用いるエビの種類を増やすことで、検査精度を向上させることが出来ると推測された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、エビFDEIAの原因抗原候補としてfructose 1,6-bisphosphonateおよびNesprin-1を同定した。エビFDEIAの主要抗原であることを証明するためには、これらのタンパク質に対する特異IgE抗体が、エビFDEIA患者でどの程度の頻度で検出されるかを明らかにする必要がある。今後、可能な限り多くのエビFDEIA患者の血清を収集し、これらの抗原候補に対する血清IgE抗体の結合を解析する。 原因抗原候補のリコンビナントタンパク質を作製する予定であるが、抗原候補へのIgEの結合パターンから、患者血清IgEが抗原の糖鎖構造等の立体構造を認識している可能性が考えられた。そこで、天然型抗原の精製を最優先に行い、患者血清IgEが糖鎖などの修飾部位を認識しているか否かを明らかにする。精製抗原を用いて、IgEの結合が糖鎖などによるタンパク質修飾に依存していないことを確認した後に、糖鎖修飾を受けない大腸菌におけるリコンビナント抗原の発現を検討する。
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