研究実績の概要 |
エビによる食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)患者を診断するために行われる負荷試験の感度は低い。同様に、臨床で使用されているエビ特異IgE抗体検査についても、確定診断されたエビFDEIA患者が陰性を示すケースが散見される。本研究では、エビFDEIA 患者の原因抗原を明らかにし、精製エビ抗原を利用した精度の高いエビFDEIAの診断法の開発を試みた。 バナメイエビ、ブラックタイガー、クルマエビ、タイショウエビのむき身より可溶性タンパク質を抽出し、二次元電気泳動にて分離後、エビFDEIA患者血清とインキュベートし、IgE結合タンパク質を解析した。その結果、40 kDaおよび70 kDaタンパク質にIgEの結合が認められた。これらのタンパク質を質量分析機により解析し、40kDaおよび70 kDaタンパク質は、それぞれfructose 1,6-bisphosphonate aldolase (FBA)およびNesprin-1 homologであることを明らかにした。 次に、バナメイエビを用いてこれらIgE結合タンパク質の精製法の検討を行い、硫酸アンモニウム沈殿、Resource Qカラム、HiTrap Butyl FFカラム、YMC-Pack C4カラムクロマトグラフィーにより精製できることを明らかにした。精製アレルゲンに対する患者血清IgEの結合性をwestern blot法で確認した結果、FBA特異IgE抗体の陽性率は9.5%(2/21)、Nesprin-1 homolog特異IgE抗体の陽性率は19.0%(4/21)であった。今後、ELISA法やImmunoCAP法を利用した特異IgE抗体価を定量的に解析する方法を確立することでエビFDEIA患者に対する検査精度の向上が期待できる。
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