研究課題/領域番号 |
17K10006
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
竹内 恵美子 北里大学, 医学部, 講師 (00406935)
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研究分担者 |
大津 真 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (30361330)
竹内 康雄 北里大学, 医学部, 教授 (60286359)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 好中球 / 全身性エリテマトーデス / プログラム細胞死 / 慢性肉芽腫症 |
研究実績の概要 |
好中球Netosisは抗核抗体産生の一因である。好中球NADPH oxidase (NOX2)による活性酸素種(ROS)産生はNETosisのtriggerとなると考えられており、NOX2を欠損した慢性肉芽腫症の好中球ではNetosisを起こりにくく、一方でSLEなどの抗核抗体陽性疾患ではNetosisは亢進していると考えられている。 我々は抗シトルリン化Histone抗体を用いて従来の方法よりも高い特異性でNETosisの頻度を定量することに成功した。この方法を用いてLupusモデルマウスのNETosis頻度を測定したところ、抗核抗体陰性の若年マウスは正常マウスと変わらないが、抗核抗体陽性のLupusマウスはNetosisの頻度が上がることがわかり、NETosisの起こしやすさは好中球そのものではなく血清の抗核抗体の存在等に依存することが分かった。そこで、in vitroにおいて抗体の存在しないRAG2KOマウスの好中球を分離し各種抗核抗体の存在下でNETosisを誘導したところ、抗DNA抗体存在下ではNetosisは亢進しないが、ROSによって障害された酸化DNAに対する抗体を加えると、NETosisが亢進することが分かった。つまり、今まで抗DNA抗体として検出されていた抗体の中に、病原性の高いものとほとんど関係ないものがある可能性が示唆されるに至った。 我々はさらに、過去の報告より酸化DNAはミトコンドリア由来であること、NOX2を欠損した慢性肉芽腫症でもミトコンドリアのROS産生はおこること、慢性肉芽腫症から抗核抗体陽性のSLE様自己免疫疾患が発症することがあることなどから、ミトコンドリアでのROS産生と酸化DNAの放出、およびその病原性についてさらなる検討を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は、NETosisの特異性の高い定量法を確立し、その方法を用いて信頼に足る定量データを得ることであったので、当初の目標は概ね達成したといえる。ただ、申請者はその客観性においてNETosisの定量をFACSで行うのが理想的であると考えていたため、様々な抗体や固定法を試みたが適当な手法を確立するに至らなかった。NETosisを厳密に判定するには、最終的には独特の形態を顕微鏡下に確認する必要があり、細胞外DNAの存在によって完全に客観的な定量を行うことは不可能であり、定量データを他のデータを踏まえての参考程度にとどめるべきであると考えられた。 NOX2の活性化とミトコンドリア由来ROS産生との関連については、現在実験が進行中であるが、NOX2活性を失うとミトコンドリアでのROS産生は亢進し酸化DNAの放出も促進するというデータが出つつあり、今後慢性肉芽腫症での炎過剰炎症との関連に迫る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
一般に、NOX2活性の欠損した慢性肉芽腫症マウス(CGDマウス)ではNETosisは起こらないと考えられてきたが、申請者らがPMAや各種TLR Ligandなどを用いてNETosisを誘導したところ、いずれの刺激においてもCGD好中球はNetosisを起こすことが分かった。しかし、ミトコンドリアでのROS産生は特にTLR Ligandによる刺激時にCGDでむしろ亢進していることが明らかとなり、それに伴って酸化DNAの放出も亢進していることが分かった。 ミトコンドリアはもともと細胞内寄生性微生物であったため、そのDNAはDAMPSとして炎症を拡大することが知られている。既報においてNETの一成分として検出された酸化DNAはミトコンドリア由来といわれているが、われわれの実験においても抗酸化DNA抗体は通常の抗DNA抗体よりNETosisを誘導しやすく、炎症を拡大するように働くという結果が得られた。 また、今までの申請者の実験の結果ではCGDの好中球は正常好中球よりアポトーシスに至るタイミングが遅い(または、アポトーシスをおこさない)ことが示唆される。 これらの結果を踏まえて、今後は正常またはCGD好中球のミトコンドリアの膜電位の経時的変化をFACSで解析しミトコンドリアの脱分極とApoptosis/NETosisの振り分けとの関連について解析していく。 その際に新たな手法であるprime Flourを用いてmRNAの発現と他の蛍光物質を同時にFACS画面上で解析できるよう取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者に一部の解析を依頼する予定になっていたので、その立ち上げにかかる経費を含めて分担金を配分していたが、この分担者が異なるテーマで使用していた解析システムを応用できることがわかり、新たに立ち上げる必要がなくなったため、約30万を次年度へ繰り越すことができた。 この分は30年度のPrime FlowによるmRNA発現のFACSでの解析システム確立のための資金とする予定である。
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