好中球NETosisは抗核抗体産生の一因であり、SLEなどの抗核抗体陽性自己免疫疾患の増悪因子である。NETosisが起こる機序には不明な点が多いが、NADPH oxidaseの活性化による活性酸素種(ROS)の産生が引き金になると考えられている。本研究課題はNADPH oxidaseを欠損した慢性肉芽腫モデルマウス(CGD)とwild type (wt)との比較によりROS産生がNETosisにもたらす影響を検討することを目的としている。 今までの研究成果により、CGDの好中球はNADPH oxidaseの活性欠損を補うように普段からミトコンドリアでのROS産生(mtROS)が活発化していることを我々はFACSで示してきた。TLRリガンドの添加はmtROS産生を変化させないが、自己核タンパクであるsnRNPを添加すると、wt、CGDともにmtROSが産生され、NETosis様のDNA releaseがおこった。我々はこの様子をtime lapse画像によって記録することができた。NADPH oxidase 依存的であるPMAにより好中球を刺激した場合には、CGDではNETosisがおこらないため、snRNPの添加によるNETosis様細胞死は、通常のNETosisとは異なる、NADPH oxidase非依存的な経路でDNA releaseを起こしている可能性が示唆された。 また、snRNPによりNADPH oxidase非依存的経路でNETosisを誘導するときに、Apoptosisを阻害するとNET放出が激しくなり、特にCGD好中球においてこれが顕著であることから、我々は、細胞死自体が炎症を制御するファクターであり、Apoptosisを炎症抑制的細胞死、NETosisは炎症拡大的細胞死としてin vivo ではバランスがとられているのではないかと考えている。これを明らかにするため、IncuCyteを用いて同一plate上の細胞に様々な刺激と阻害を加え、NETosisとmtROS産生の変化する様子を経時的に観察比較し、この経路の炎症に及ぼす意味を解明したいと考えている。
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