研究課題/領域番号 |
17K10007
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上條 清嗣 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00445470)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アレルギーマーチ / アレルゲン / アレルギー性皮膚炎症 / アレルギー性気道炎症 / マウスモデル |
研究実績の概要 |
アレルギー疾患の発症に関わる環境因子の内で、スギ花粉と並んでわが国において最も重要と考えられるものの一つとしてダニアレルゲンが挙げられる。昨年度までの検討に引き続いて、このダニアレルゲンと同じシステインプロテアーゼアレルゲンのファミリーに属するモデルアレルゲンであるパパインを用いて、皮下・経皮投与による皮膚炎症モデルと、その後の点鼻投与による気道炎症モデルを複合したアレルギーマーチモデルの解析を進めている。 これまでに、パパイン皮下投与による皮膚炎症モデルにおける好塩基球およびマスト細胞の貢献を明らかにするとともに、同モデルが気道炎症モデルとは異なりIL-33に非依存であることに着目し、パパインに曝露された皮膚組織で産生されるある因子が、皮膚の2型自然リンパ球のIL-33による活性化を抑制している可能性をつきとめた。現在はパパインに曝露された皮膚でIL-33非依存的にアレルギー応答・Th2応答が惹起される機序を解析している。 さらに、パパインによるアレルギーマーチモデルの解析では、パパインに対し経皮感作が成立しているマウスでは、より低用量のパパイン点鼻でアレルギー性気道炎症が惹起されることがすでに明らかであり、この過程へのIL-33およびIL-33受容体陽性Th2細胞・2型自然リンパ球の関与を示唆するデータを報告している。 今後は皮下投与モデルで得られた知見を順次、すでに確立済みの経皮投与モデル、アレルギーマーチモデルで検証するとともに、スギ花粉モデルを確立し、その解析を進める予定である。また、低用量のアレルゲンを長期間にわたり投与することでアレルゲン特異的に免疫寛容を誘導するモデルを確立し、同じ組織の同じアレルゲンへの曝露が感作に向かう時と寛容に向かう時の機序の違いを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画で想定していた好塩基球機能への干渉や、2型自然リンパ球とTh2細胞の相互作用への干渉を中心とした先制介入治療法の開発というコンセプトから、パパインへ曝露された皮膚組織が産生する2型自然リンパ球活性化抑制因子の解析や、低用量・長期間のアレルゲン曝露で誘導されるアレルゲン特異的免疫寛容の誘導とそのメカニズムの解析に焦点を移して計画を進めている。 当初の計画から方向転換をした関係上、複数アレルゲンに順次感作が広がってゆく機序の解析や、好塩基球機能の解析が後手にまわっており、そのため「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
すでに明らかにしているパパイン曝露皮膚が産生する2型自然リンパ球活性化抑制因子が、パパイン皮膚炎症モデルや、その後の気道曝露による気道炎症モデルにどのように関与しているのかを解析する。 また、当初の予定通り、スギ花粉アレルギーマーチモデルの確立と解析を進めるとともに、各種アレルゲン刺激への好塩基球応答がIgE受容体γ鎖に依存するという知見に立脚した、γ鎖会合アレルゲン受容体の探索や、気道におけるTh2細胞・2型自然リンパ球の相互作用についても引き続き検討を進めてゆきたい。 さらに、低用量・長期間のアレルゲン曝露で誘導されるアレルゲン特異的免疫寛容の誘導機序についても解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)パパイン皮膚炎症モデルでの2型自然リンパ球抑制因子についての解析は、当初29年度に予定していたが、有望な結果が得られたため優先的に解析を進めており、また、本研究課題に関する実験で得られた結果から派生して、経皮投与によるアレルゲン特異的免疫寛容の誘導機序について解析を行っているため、研究計画遂行の順序に変更がなされた。 (使用計画)2型自然リンパ球抑制因子の検出に用いる抗体や、免疫寛容の誘導に関与する細胞の検出・除去に用いる抗体、さらにスギ花粉アレルギーマーチモデル解析の為のマウスおよび試薬を購入するための物品費として、また、研究成果発表に伴う旅費や英文校正費用としての使用を計画している。
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