研究課題/領域番号 |
17K10008
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
波多野 良 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (30638789)
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研究分担者 |
岩田 哲史 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (00396871)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | IL-26 / 炎症性サイトカイン / 慢性GVHD / 乾癬 / 中和抗体 / CD26共刺激 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
IL-26は近年、自己免疫疾患や感染症への関与が報告されている新規炎症性サイトカインだが、齧歯類で欠損している遺伝子なため、疾患モデルを用いた炎症病態における産生細胞や標的細胞、機能について未解明な点が非常に多い。さらに、IL-26を分子標的とした新規治療法の有効性評価を行ううえで必須となる抗ヒトIL-26中和モノクローナル抗体(mAb)や発現解析用抗体についても市販の抗体が充実していない状況にある。そこでまず、今年度はIL-26の機能及び発現を解析するうえで不可欠な抗ヒトIL-26mAbの開発を行い、in vivo及びin vitroでの中和・治療実験用抗体、免疫組織染色用抗体、sandwich ELISA用抗体、フローサイトメトリー用抗体の作製に成功した。 さらに、ヒトIL-26トランスジェニック(hIL26Tg)マウスに、TLR7/8のアゴニスト活性を示すイミキモド含有クリームを表皮に連日塗布するイミキモド誘導性乾癬モデルを用いて、IL-26が血管内皮細胞に直接作用し、血管新生及び炎症性細胞浸潤を顕著に亢進することを初めて明らかにした。さらに、そのメカニズムとしてIL-26はケラチノサイト及び血管内皮細胞に作用して、重要な血管新生促進因子であるfibroblast growth factor (FGF) 1、FGF2、FGF7の発現を上昇させることを示した。最後に、樹立したIL-26中和mAbは、hIL26Tgマウスのイミキモド誘導性乾癬様症状の悪化を顕著に抑制し、血管新生、炎症性細胞浸潤も顕著に抑制され、著明な治療効果が認められた。 今後、CD26共刺激によるIL-26産生誘導メカニズムの解明を進めるとともに、IL-26産生T細胞への分化誘導因子及びIL-26産生T細胞の特性解析、慢性GVHDを含む慢性炎症疾患モデルにおけるIL-26分子標的療法の有効性評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-26は近年、産生細胞や作用する標的細胞、機能について次々と新たな報告がされ、着目されている新規炎症性サイトカインだが、齧歯類で欠損している遺伝子なため、ヒト検体を用いた解析が主であり、また、発現解析用抗体等も市販の抗体が充実していない状況にある。そこでまず、今年度はこれまでの申請者のモノクローナル抗体(mAb)開発経験を活かし、in vivo及びin vitroでの中和・治療実験用抗体、免疫組織染色用抗体、sandwich ELISA用抗体、フローサイトメトリー用抗体の作製に成功した。 さらに、ヒトIL-26トランスジェニック(hIL26Tg)マウスを用いて、イミキモド誘導性乾癬モデルをおいて、IL-26が血管内皮細胞に直接作用し、血管新生及び炎症性細胞浸潤を顕著に亢進することを初めて明らかにした。in vitroにおいて、IL-26は血管内皮細胞のFGF2及びFGF7の発現を増強させ、増殖及び管形成を顕著に促進すること、さらにIL-26による血管内皮細胞活性化にはAkt、ERK、NFkBシグナルが重要あることを示した。最後に、樹立したIL-26中和mAbは、hIL26Tgマウスのイミキモド誘導性乾癬様症状の悪化を顕著に抑制し、血管新生、炎症性細胞浸潤も顕著に抑制され、著明な治療効果が認められた。 現在、CD26共刺激によるIL-26産生誘導メカニズムの解明と、慢性GVHDモデルにおけるIL-26分子標的療法の有効性評価についても解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、慢性GVHDを含む慢性炎症疾患モデルにおけるIL-26分子標的療法の有効性評価を行う。さらに、CD26共刺激によるIL-26産生誘導メカニズムの解明と、IL-26産生T細胞への分化誘導因子及びIL-26産生T細胞の特性解析を行い、IL-26産生T細胞サブセットを同定する特異的な細胞表面マーカーや転写因子を明らかにする。 これらの研究により、様々な難治性慢性炎症疾患の病態にIL-26がいかに関与しているかを明らかにすることができ、IL-26やその産生誘導因子、下流シグナルといった新規治療標的の開発につなげることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
IL-26を分子標的とした新規治療法の有効性評価を行ううえで必須となる抗ヒトIL-26中和モノクローナル抗体(mAb)や発現解析用抗体についても市販の抗体が充実していない状況にある。そこでまず、今年度はIL-26の機能及び発現を解析するうえで不可欠な抗ヒトIL-26mAbの開発を優先させ、in vivo及びin vitroでの中和・治療実験用抗体、免疫組織染色用抗体、sandwich ELISA用抗体、フローサイトメトリー用抗体の作製に成功した。 次年度以降、これらの抗体を用いて、疾患モデルにおけるIL-26の新たな役割の解明とIL-26分子標的療法の有効性について評価を行う。
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