研究課題
IL-26は近年、自己免疫疾患や感染症への関与が報告されている新規炎症性サイトカインだが、齧歯類で欠損している遺伝子なため、疾患モデルを用いた炎症病態における産生細胞や標的細胞、機能について未解明な点が非常に多い。これまでの本研究課題において、IL-26分子標的療法を確立するための抗ヒトIL-26中和モノクローナル抗体(mAb)や、各種疾患におけるIL-26の発現レベルを診断するための解析用mAbの作製に成功した。また、炎症環境下でヒトIL-26の発現が誘導されるhIL-26BACTgマウスを用いて、乾癬様モデル、並びに、移植片対宿主病(GVHD)モデルにおけるIL-26の機能の解析を行った。IL-26は炎症性腸疾患の炎症部位での発現が報告されている。今年度は、hIL-26BACTgマウスにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を自由飲水で摂取させる急性大腸炎モデルを用いて、大腸炎病態におけるIL-26の機能解析を行った。hIL-26Tgマウス及びcontrolマウスに2.5% DSS水を摂取させたところ、controlマウスはhIL-26Tgマウスよりも大腸炎scoreが有意に高く、IL-26がこの急性大腸炎モデルにおいてprotectiveに働いていることを示唆していた。大腸組織のRNA-seq解析を行った結果、DSS飲水による大腸炎誘発時にはhIL-26Tgマウスは間質分画の遺伝子発現が上昇する一方で、炎症性サイトカインであるTNFやケモカインCXCL9, CXCL10の発現はcontrolマウスよりも低かった。これらの結果から、DSS誘発性急性大腸炎モデルでは、IL-26は大腸粘膜上皮のバリア機能を亢進することで大腸炎の制御に関わっていると予想される。今後、ヒトの炎症性腸疾患の病態を模倣したT細胞依存的な慢性大腸炎モデルにおけるIL-26の機能解析が期待される。
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