本研究では、SLE患者の末梢血免疫フェノタイピングにより、T細胞フェノタイプの差異による3群の免疫学的亜集団が存在することを明らかにし、このなかで濾胞性ヘルパーT (Tfh)細胞がドミナントに活性化する群が既存の免疫抑制療法に抵抗性であることをを示した(平成29年度)。平成30年度には、SLE患者で活性化しているTfh細胞の表現型と誘導機構を解析し、IL-12刺激で誘導されるSTAT1とSTAT4の活性化がヒストン蛋白修飾を介してTfh/Th1様細胞を誘導することを見出した。さらに、SLE患者では血清IL-12レベルが増加し、活性化Tfh/Th1様細胞においてSTAT1/STAT4のリン酸化が亢進しており、IL-12-JAK-STAT経路がSLEに対する新たな治療標的となると考えられた。 本年度は、病的Tfh細胞の分化・活性化を誘導する分子標的薬を用いたヘルパーT細胞の形質転換による免疫異常の是正の可能性を探索した。これまでの結果から、SLE患者ではIL-12で誘導されるJAK-STAT経路の阻害がTfh細胞の活性化を抑制することが想定され、特にIL-12はIL-12受容体に結合するJAK2、TYK2の活性化を誘導することから、今回JAK阻害薬に着目して検討を行った。その結果、in vitroでの検討において、IL-12で誘導されるTfh/Th1細胞様の細胞形質がTYK2阻害薬の添加により強く抑制され、TYK2阻害薬がTfh細胞に対する特異的な阻害作用を示す可能性が示唆された。現在、SLEに対してJAK2阻害薬バリシチニブの第2相臨床試験が進行中であるが、今回の結果から、TYK2阻害薬がTfh細胞を抑制することで治療抵抗性SLEに対する有力な分子標的治療薬となりうると考えられた。
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