令和1年度に主にマウス好中球のToll-like receptor 2(TLR2)およびScavenger receptor CD36に着目し、これらの分子の欠損による自然免疫反応の異常がグラム陽性菌への易感染性・感染重症化を引き起こすメカニズムを解析した。 TLR2 欠損 (KO)マウスではS. aureus感染に対する易感染性、生存率低下、臓器および血中の炎症性サイトカインの過剰産生が前年度に判明された。そこで、好中球のTLR2 はこれらの現象にどのように関与するかを調べるために、WTマウスおよびTLR2KOマウスの腹腔より好中球を採取して実験に供した。S. aureus死菌刺激によりTLR2KOマウスの好中球からのTNF-alpha、IL-6などの炎症性サイトカイン産生はWTマウス由来の好中球に比べて著しく上昇したとともに、IL-10抗炎症性サイトカインも高く検出された。また、TLR2KOマウスでは好中球の組織浸潤はWTマウスと同程度に認められた一方、in vitroにおいてTLR2KO好中球の貪食能はWT細胞より低下したことが確認された。これらの結果から感染初期のS. aureus貪食排除には好中球のTLR2が必須であること、TLR2KOマウスにおける炎症性サイトカインの過剰産生は好中球に依存することが分かった。 現在のところ、好中球のTLR2欠損によるScavenger receptor CD36の発現異常が認められていない。今後更に検討する予定である。
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