研究課題/領域番号 |
17K10015
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
茂呂 寛 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (40509452)
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研究分担者 |
高田 俊範 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (40361919)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 敗血症 / 鉄 / ヘプシジン |
研究実績の概要 |
新潟大学医歯学総合病院で2015年3月から2016年12月にかけて血液培養陽性となった成人を対象に臨床背景を調査し、第1病日、第2-3病日、第10病日以降の3点で鉄代謝マーカーを測定した。 対象は43症例で、年齢の中央値は72歳、原因菌はE.coli が最多であった。ヘプシジン血中濃度は血流感染症の発症直後より上昇し、病勢の安定とともに、正常域近くまで低下していた。これに伴い、血清鉄は敗血症発症直後に急激に低下し、経過とともに正常域に回復する傾向を示した。またヘプシジンは急性期のヘモグロビンの低下量と相関しており、ヘプシジンによる鉄利用抑制が急性感染症における貧血の進行に関与していることが示唆された。一方もう一つの鉄調整因子Ngalは急性期に増加を認めたが、ピークはヘプシジンより遅れていた。敗血症例と非敗血症例の二群を比較したところ、両者でヘプシジン値に有意な差は認められなかったが、Ngalは敗血症例で有意に高値を示した。またNgalは敗血症性ショックやICU入室例で有意に増加しており、敗血症診断におけるROC曲線を作成するとAUC=0.75と、最も高値であった。 二つの鉄調節因子ヘプシジン、Ngalはその挙動に違いがあるものの、ともに急性期に増加していた。血流感染症において、生体は異なる機序をもつ複数の鉄調節因子を介して病原体への鉄の供給を抑制していた。急性感染症における鉄制御機構の変化は自然免疫の一部として重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って検体の収集と結果の取りまとめが進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
中途解析で、当初予想された通りの結果が得られており、今後も臨床検体の集積をはかるとともに、データの解析を進める。さらに国際学会の発表を経て論文作成に進めていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進んでいるが、初年度ということで、検体の集積が主体となり、試薬の消費や学会への出張が限られていたためと考えられる。平成30年度は、研究成果について国際学会(米国感染症学会)での発表を控えており、また検体の解析にあたり物品の消費量も増えることが予想されることから、次年度使用額を使用可能と考えられる。
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