研究課題/領域番号 |
17K10016
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
志村 和也 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (90613836)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HIV / 潜伏感染 |
研究実績の概要 |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療において、生体内において安定的に存在する潜伏感染細胞は、ウイルスの完全排除に対する大きな関門となっている。本研究課題では、この潜伏感染細胞の特徴をより深く理解するために、独自に樹立した蛍光HIV潜伏感染モデル細胞を用いて、再活性化刺激に応答する標的分子の解析を行っている。このモデル細胞では、既報のHIV潜伏感染細胞と同様に、ブロモドメインタンパク質であるBRD4に対する阻害剤、JQ-1により潜伏感染の再活性化が誘導された。また、リアルタイムRT-PCR法により、JQ-1が5’LTRのR領域からの転写を誘導していた。さらに、BRD4に対するshRNAを導入した潜伏感染モデル細胞では、JQ-1処理により、相乗的にマーカータンパク質の高発現が認められた。HIV-1 Tatタンパク質は、LTRからの転写伸長過程を亢進する働きを有することが知られている。そこで次に、JQ-1による再活性化におけるTatタンパク質の役割を解析するために、潜伏感染モデル細胞においてCRISPR/Cas9によるTat欠失潜伏感染モデル細胞を樹立した。このTat欠損細胞では、JQ-1による再活性化は認められなかった。さらには、潜伏感染の維持/再活性化に関与する様々な分子に対するshRNAを導入した結果、ブロモドメインタンパク質であるBRD9や、Tatタンパク質との結合能が報告されているTAF1なども潜伏感染において役割を果たしていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
shRNAを用いたスクリーニングにより、潜伏感染の維持あるいは再活性化に関与する既報の分子以外にも、いくつかのタンパク質の関与を示唆する結果が得られている。 また、latent infection(潜伏感染)とproductive infection(ウイルスの複製を伴う感染)とを明確に区別して解析するために、2色の蛍光タンパク質を発現するベクターを構築した。このベクターを種々のT細胞株に感染させたところ、latent infectionが優位な細胞株、productive infectionが優位な細胞株、あるいはウイルス感染に対して高感受性を示し、細胞死多く見られる細胞株等、様々な傾向が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
bi-color HIV-1を細胞株に感染させて認められたいくつかの傾向について、詳細な検討を行う。また、初代T細胞へ感染させて、同様の解析を行う。また、bi-color HIV-1を感染させた細胞において潜伏感染の維持/再活性化に関与する分子に対するshRNAを導入し、潜伏感染への移行に与える影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の解析に当初の予想より費用がかからなかったため。 次年度の解析に必要な消耗品や細胞培養等に必要なプラスチック器具等の購入を計画している。
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