研究課題/領域番号 |
17K10017
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石井 亜矢乃 岡山大学, 大学病院, 准教授 (00423294)
|
研究分担者 |
和田 耕一郎 岡山大学, 大学病院, 講師 (20423337)
狩山 玲子 岡山学院大学, 人間生活学部, 教授 (40112148)
小比賀 美香子 岡山大学, 大学病院, 助教 (00610924)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 尿路感染症 / 乳酸菌 / 次世代シーケンサー / 細菌叢 / バイオフィルム |
研究実績の概要 |
再発性尿路感染症に対する乳酸菌膣坐剤の有効性に関する基礎・臨床的エビデンスを構築するために、臨床研究ならびに基礎研究を実施した。 1.本研究課題の初年度である29年度は、次世代シーケンサーによる基礎データの集積を目的に、乳酸菌タブレットの直腸・膣内細菌叢に及ぼす効果に関する臨床試験を行った。尿路の基礎疾患の有無については問わないが、閉経後の女性外来患者に乳酸菌タブレットを投与し、47例で直腸・膣内細菌叢サンプルの全ゲノム配列を次世代シーケンサーにより決定した。 2.一方、反復性膀胱炎患者5名(29年度)に過酸化水素の産生能が高い乳酸菌膣坐剤を週3回投与した。5名の年齢は52~85歳(平均68.6±12.1歳)で全例閉経後であった。乳酸菌投与前での尿路感染症発症頻度は平均4.4回/年であった。まだ投与1年以内のため比較はできないが、投与後尿路感染症発症頻度は減少している印象である。 3.in vitro実験系を用いて、緑膿菌尿路バイオフィルム感染症に対する乳酸菌と抗菌薬の併用効果について検討した。コロニーバイオフィルム法では、緑膿菌は乳酸菌により増殖が抑制され、LVFXとの併用でバイオフィルムの形成抑制効果が示唆された。フローセルシステムでは、乳酸菌による緑膿菌バイオフィルムの形成抑制効果がみられ、LVFXとの併用で抑制効果が増強した。検討した乳酸菌3株(L. crispatus)のなかで、過酸化水素産生能の最も高い株の有用性が示唆され、抗菌薬との併用による治療効果も期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は過去に乳酸菌膣坐剤を挿入したことがある閉経後の女性を対象に、過酸化水素の産生能が高い乳酸菌膣坐剤を投与し、次世代シーケンサーを用いて膣内細菌叢を評価し、投与した乳酸菌の定着を検討する新たな臨床研究を立案していたが、臨床研究法の公布、施行により特定臨床研究の範疇となり、新規申請の準備に時間を要しており、開始できていない。 再発性膀胱炎患者に対する乳酸菌膣坐剤を用いた臨床研究は順調に進んでいる。 in vitro実験はおおむね順調に進んでおり、価値ある基礎的エビデンスを得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
1.乳酸菌タブレットの直腸・膣内細菌叢に及ぼす効果に関する臨床試験で、次世代シーケンサーにより得られたデータ(全ゲノム配列)を解析する。 2.平成30年度は臨床研究法に基づき特定臨床研究の研究責任医師になるために講義を受け、特定臨床研究の研究責任医師として認定を受け、新たな特定臨床研究を立ち上げる。 3.29年度に行った反復性膀胱炎に対する乳酸菌膣坐剤の予防効果に関する臨床試験は、引き続き30年度も継続する。 4.in vitro実験系を用いて、複雑性尿路感染症の主要原因菌に対する乳酸菌と抗菌薬の併用効果について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新たな臨床研究が開始できず、予定していた物品費や研究成果発表のための学会や研究会への出張旅費に費用を要しなかった。 30年度に新たな臨床研究を立ち上げ、29年度に計上していた嫌気性ボックス(300千円)、陰圧ポンプ(100千円)を30年度に購入する。消耗品費としてDNA研究用試薬・器具類、フローセル用部品、形態観察用蛍光試薬、細菌培養用培地・シャーレ、ボトル・チューブ・チップ類、その他試薬・器具類を購入する。また、研究成果発表のための学会や研究会への出張旅費に使用する。その他、次世代シーケンサーにより得られたデータを解析する費用にあてる。
|