研究課題
再発性尿路感染症に対する乳酸菌膣坐剤の有効性に関する基礎・臨床的エビデンスを構築するために、臨床研究ならびに実験研究を実施した。臨床研究では、①「反復性膀胱炎に対する乳酸菌膣坐剤の予防効果」は論文化した。21例の平均年齢は68.3歳で、投与前より有意に再発回数が減少していた。②「乳酸菌タブレットの直腸・膣内細菌叢に及ぼす効果」:反復性膀胱炎患者4例での次世代シーケンサーによる解析において、直腸では非反復性膀胱炎患者と大きな変化がなかったが、膣では非反復性膀胱炎患者では見られなかったEnterobacteriaceae属が上位であった。③上記①②の臨床研究において、反復性膀胱炎患者の膣内細菌叢のデータが少ないという問題が生じた。そこで、最終年度に閉経女性を対象として新たな臨床研究を立ち上げ、非膀胱炎患者10例、反復性膀胱炎患者5例で次世代シーケンサーにて解析した。直腸ではそれぞれの患者での上位の細菌叢は似通っていた。膣では非膀胱炎患者ではLactobacillaceae属が上位であったが、反復性膀胱炎患者ではEnterobacteriaceae属が上位であった。実験研究では、治療に抵抗性を示すバイオフィルムに着目して研究を進めた。当初予定の研究期間(4年間)に、2種類の評価系を使用して、緑膿菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対する乳酸菌と各種抗菌薬(単独および併用)の評価を行った。一連の研究成果をまとめ学会発表したが、使用した実験系での大腸菌のバイオフィルム形成能が緑膿菌に比較して弱いことが課題として浮かび上がった。そこで、最終年度に膀胱モデルにおける大腸菌のバイオフィルム形成能を検討した。その結果、シリコンチューブを使用することでバイオフィルム形成過程の観察が可能であることが明らかとなり、この膀胱モデルを最適化することで新たな評価系になりえると考えられた。
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International Journal of Urology
巻: 28 ページ: 1026-1031
10.1111/iju.14636
巻: 28 ページ: 1282-1289
10.1111/iju.14675