研究課題
HIV-1増殖のコントロールに関係する10種類のエピトープに特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)の機能解析をするため、まずIFN-γ ELISPOT assayにおいてエピトープ特異的CTL反応が見られた感染者のPBMCをそれぞれのエピトープペプチドで刺激し、2週間培養後エピトープ特異的bulk CTLを誘導した。その後誘導したbulk CTLから限界希釈法によってCTLクローンを樹立し、段階希釈したエピトープペプチドを結合させた抗原提示細胞(721.221細胞:それぞれのHLA拘束分子を発現している)に対するIFN-γ産生能をIFN-γ細胞内染色法で検出した。その結果、いずれのエピトープ特異的CTLも10nMのペプチド濃度において高い頻度のIFN-γ産生細胞が認められ、これらのCTLの抗原認識能は高いことが示された。721.221細胞にHIV-1サブタイプBのウイルス株であるNL-4-3を感染させ、HIV-1感染細胞を作製し、HIV-1感染細胞に対する10種類のエピトープ特異的CTLクローンのIFN-γ産生能をIFN-γ細胞内染色法で解析した結果、いずれのCTLも感染細胞に対して高いIFN-γ産生能が認められ、エピトープが感染細胞内でプロセシングされ、細胞表面で抗原提示されることが明らかとなった。さらに、HIV-1感染CD4T細胞とエピトープ特異的CTLクローンを共培養し、in vitroでのCTLによるHIV-1増殖抑制能を解析した結果、いずれのCTLも効率よくHIV-1増殖を抑制していることが示され、これらのCTLは高いHIV-1増殖抑制能を有することが明らかとなった。以上の結果、in vivoでHIV-1増殖のコントロールに関与していた10種類のエピトープ特異的CTLは実際に高いHIV-1増殖抑制能を持っていることが検証された。
2: おおむね順調に進展している
HIV-1増殖のコントロールに関係する10種類のエピトープに特異的な細胞傷害性T細胞のクローン作製およびそれらの細胞を用いたin vitroでのHIV-1増殖抑制効果の解析から、計画を立てる際に想定していた通りの結果が得られたので、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
430人の日本人無治療慢性HIV-1感染者の血漿を採取し、それぞれの感染者に感染しているウイルスのアミノ酸シークエンスを解析することで、エピトープ内において変異が出現しているか調べる。以上の解析から、変異が日本人にどの程度蓄積しているかを明らかにする。エピトープ内での変異アミノ酸の頻度が1%以上の場合、それらの変異を含む変異ペプチドを作製し、エピトープ特異的CTLクローンのwild-typeペプチドまたは変異ペプチドを結合させた721.221細胞に対するIFN-γ産生能をIFN-γ細胞内染色法で検出し、CTLによる変異ペプチドへの認識能を評価する。上記の変異を導入した変異ウイルスを作製し、CTLクローンのwild-typeウイルスまたは変異ウイルスを感染させた721.221細胞に対するIFN-γ産生能をIFN-γ細胞内染色法で検出することで、CTLによる変異ウイルス感染細胞への認識能を評価する。
(理由)30年度の研究計画において、さらなるペプチド合成が必要であると考えられたため、次年度に繰り越しを行った。これにより、大幅な研究の進展が見込める。(使用計画)さらなるペプチド合成の費用を算出した。また、細胞内染色用試薬、およびプラスチック器具にかかる費用を算出した。さらに、国内外の研究成果の発表に伴う旅費を算出した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://www.caids.kumamoto-u.ac.jp/data/takiguchi/default.html