45例の肺MAC症疑い例に気管支肺胞洗浄(BAL)を施行し、33例で非結核性抗酸菌症と診断した。このうち12か月以上の多剤治療を行った肺MAC症18例のうち菌陰性化した8例、陰性化しなかった10例での間でBAL液中のLL-37に有意差はなかった。CT画像所見の改善のあった13例は改善なかった5例と比べBAL液中のLL-37は改善群で有意に高値だった。BAL液中のLL-37とIL-8、好中球割合とIL-8の間に有意な正の相関関係を認めた。CT画像所見の改善にはBAL液中の好中球の割合、IL-8、年齢、末梢血WBC数、好中球数、CRP値のいずれも関連がなく、BAL液中のLL-37のみが関連し、CT画像所見の改善を予測するマーカーであった。 臨床分離株22株、M. avium 12株、M. intracellulare 10株に対するLL-37の最小発育阻止濃度(MIC)は20μg/ml以上とLL-37自体の抗菌活性は弱かったが、LL-37存在下でのクラリスロマイシン(CAM)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)に対するMICは有意に低下し、抗菌活性が増強した。BAL液中のLL-37を測定した9例由来の 9株の検討ではCAMは全株、RFPは1株のみ感受性、EBは全株耐性で、LL-37 5μg/ml存在下でRFPは3株、EBは7株が感受性となった。CT画像所見が改善したのは5例、改善しなかったのは4例だった。BAL液中のLL-37 >10ng/mlだったのは改善例では5例(100%)、非改善例では1例(25%)だった。LL-37 5μg/ml存在下でのMICから、改善例5例でEBは感受性、非改善例4例は耐性となり、BAL液中のLL-37 >10ng/mlでLL-37 5μg/ml存在下でEBが感受性となる株での感染が画像所見の改善を予測するマーカーと考えられた。
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