研究課題/領域番号 |
17K10026
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
金子 幸弘 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90469958)
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研究分担者 |
仁木 満美子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20438229)
老沼 研一 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20635619)
掛屋 弘 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40398152)
鈴木 仁人 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (70444073)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 網羅的遺伝子検出 / 耐性因子のリスト化 / 新規耐性遺伝子の検出 / 科学的・効率的な感染制御の実践 |
研究実績の概要 |
本研究では、科学的・効率的な感染制御の実践に寄与することを目指し、以下に示すような耐性菌の遺伝子情報を基本とする各種検討を行った。 1)全ゲノム解析による耐性遺伝子の網羅的検出と解析に関して、アシネトバクターの全ゲノム解析を実施した。血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、遺伝子解析(ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析)を完了した。また、症例の解析と菌の薬剤感受性の測定を行い、発見した因子がどの程度耐性や重症化に寄与しているかを検討した。耐性因子のリスト化を行い、耐性因子の蔓延状況と臨床的重要性について検討した。成果の一部は日本感染症学会等で発表した。 2)新規耐性因子の探索と解析に関しては、これまでに解析したゲノムの中から、新たにカルバペネマーゼ活性の可能性を有する耐性因子発見の手がかりを得た。 3)耐性機構と病原性の解析に関して、1つ目はコリスチン耐性菌種Acinetobacter gs 13BJ/14TU(OCU_Ac7株)の耐性機構に迫るため、全ゲノム解析からの耐性機構予測を行った。2つ目として誘導されるコリスチン耐性の耐性機構の解析を実施した。複数のコリスチン耐性株を取得し、ドラフトゲノム解析を開始した。3つ目として、コリスチン耐性菌を指示菌とする新しい抗菌薬探索法を確立した。コリスチンに対して耐性化すると、他系統の抗菌薬の感受性が変化する(コラテラル感受性)ことが知られている。新しい抗菌薬探索には、このコラテラル感受性という性質を利用した。 4)カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討では、完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)を同定した。また、一部のプラスミドについては、実験的に伝達性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アシネトバクターの全ゲノム解析に関して、血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析を完了し、論文作成中である。一方、新規の解析については、年間5-10株の目標は未達成であるが、準備は進んでいる。 新規耐性因子の探索と解析に関しては、これまでに解析したゲノムの中から、見落とされていた耐性因子発見の手がかりを得ており、概ね予定通りである。 コリスチン耐性株の耐性機構と病原性の解析に関して、コリスチン耐性が複数の要因によって発現されることを見出した。また、コリスチン耐性によって、他の抗菌薬に対する感受性が変化するコラテラル感受性を利用した新しい抗菌薬開発法を確立し、予想を越える展開も得られている。 カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討では、完全ゲノムを決定し、耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)を同定した。また、一部のプラスミドについては、実験的に伝達性を確認した。以上の結果について論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
アシネトバクターの全ゲノム解析に関して、血液分離株の13株については、菌種同定、患者背景、ドラフトゲノム解析、MLST解析、POT解析の結果をまとめ、論文にて発表する予定としている。新規のゲノム解析については、年間5-10株の目標を達成するべく、菌株の収集と解析をさらに進める。 新規耐性因子の探索と解析に関しては、見落とされていた耐性因子について、耐性への寄与度を実験的に確認する予定としている。 コリスチン耐性株の耐性機構と病原性の解析に関して、コリスチン耐性が複数の要因によって発現されることを見出し、耐性化した複数株についてゲノム解析を継続する。また、コリスチン耐性によって、他の抗菌薬に対する感受性が変化するコラテラル感受性を利用した新しい抗菌薬開発法によって、新しい治療法の開発を目指す。 カルバペネム高度耐性のアシネトバクターに関する検討では、決定した完全ゲノムおよび耐性因子の局在(染色体及びプラスミド)、プラスミドの伝達性に関して論文としてまとめ、発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定よりも効率よく物品が購入できたことやゲノム解析の一部を次年度に繰り上げたことによる。次年度に新規分離株を含めたゲノム解析を実施したい。
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