研究課題/領域番号 |
17K10028
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
多田納 豊 国際医療福祉大学, 薬学部, 講師 (70432614)
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研究分担者 |
佐野 千晶 島根大学, 医学部, 准教授 (70325059)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | D-アミノ酸 / 抗酸菌 / マクロファージ / 分極化 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、抗酸菌の細胞内のD-アミノ酸の組成を調べる目的で、実験系の確立を試みた。当初は予定していなかったが、HPLC装置に加えて、LC-MS装置を用いた実験系(分析系)の確立にも取り組んだ。また、抗酸菌の細胞内のD-アミノ酸組成について早急に解明すべく、現在、D-アミノ酸の受託分析サービスを利用し、解析を実施している。 また、D-アミノ酸単量体ではマクロファージへの影響が認められない可能性が考えられるため、D-アミノ酸含有ポリマーであるグラム陽性細菌由来のペプチドグリカンを用いて、ペプチドグリカンにおけるD-アミノ酸の存在が、マクロファージの活性化(マクロファージの分極化)にどのような影響を及ぼすのか明らかにすることを目的として以下の検討を行った。マウス由来マクロファージ細胞株RAW264.7を供試し、ペプチドグリカンの特徴的なペプチド断片であるL-Ala-γ-D-Gln-L-Lys-D-Ala-D-Ala(D型ペプチド)、または対照として合成したL-Ala-L-Gln-L-Lys-L-Ala-L-Ala(L型ペプチド)で刺激した後、Real-time PCR法により、種々の炎症性および抗炎症性サイトカインのmRNA発現の変動を指標にして、上記ペプチドのマクロファージの活性化(分極化)に対する作用について検討を行った。その結果、上記D型ペプチドおよびL型ペプチドともに、炎症性サイトカインであるIL-1βのmRNA発現が低下傾向を示すことが認められた。他方、D型ペプチドとL型ペプチドとの間に有意な差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
D-アミノ酸の組成を解析するための実験系の確立を協力して行っていた研究協力者が平成29年度に異動した。当研究協力者の異動先にて、引き続き、実験系の確立を目指して研究協力を得ていたが、異動先のHPLC装置が故障し、かつ、その後の修理が順調に進まず、D-アミノ酸の解析系の確立が遅滞した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、D-アミノ酸の受託分析サービスを利用しており、抗酸菌のD-アミノ酸組成について今後結果が出る予定である。そのため、今後は抗酸菌由来D-アミノ酸のマクロファージの活性化に対する効果などについて詳細に解析する。 また、D-アミノ酸組成の解析系の確立について、研究代表者の所属する大学において、新たな研究協力者を得て、LC-MS装置を立ち上げ、当初予定していたHPLC装置とともに、これらの機器を用いた解析系の確立を目指して、現在研究を実施している。今後は、マクロファージ内の抗酸菌由来D-アミノ酸量など、環境の変化にともなう抗酸菌のD-アミノ酸産生量の変動や、抗酸菌の産生するD-アミノ酸によるマクロファージの活性化・分極化への影響について、菌種毎あるいは菌株毎のD-アミノ酸の産生量・種類の違いとマクロファージの感染防御機構関連因子の発現の相関性について、また、D-アミノ酸のマクロファージの活性化・分極化の細胞内のシグナル伝達などの分子メカニズムについて詳細に検討する。また、マウスを用いたin vivoにおける抗酸菌感染時のD-アミノ酸の産生状況等についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗酸菌のアミノ酸解析について、研究協力者と実施予定であったが、研究協力者が異動となり、研究協力者の移動先において実験系の立ち上げを行った。ところが、その間に研究協力者の移動先の機器が故障し、当研究グループ内でのD-アミノ酸解析の実施に遅れが生じている。ただし、現在、外注により抗酸菌のアミノ酸解析を行っている最中であり、残額の一部は、その費用のために保持したものである。また、現在、改めて、当大学においてLC-MSとHPLCの実験系を確立を目指して検討している途中であり、今後、その費用も必要となるため、残額として残る形となった。 次年度には、外注によるアミノ酸解析や、LC-MSとHPLCの実験系の確立のための費用を主として、マクロファージの活性化・分極化への効果等の解析のための試薬類などにも使用する。
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