研究課題/領域番号 |
17K10029
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
前田 卓哉 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (20383763)
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研究分担者 |
各務 博 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30418686)
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 下気道細菌叢 / 非結核性抗酸菌 / ナノポア型シーケンサー / MinION / 多剤耐性結核 |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)「ナノポア型シーケンサーを用いた網羅的な細菌・真菌のゲノム解析(細菌叢解析)の技術的構築」、(2)「確立した解析技術の非結核性抗酸菌患者検体への応用」を二つの柱としている。 1) 技術的構築・・2017年度にバイオインフォマティックス解析のパイプラインの構築を完了した。2018年には、MinIONによるシーケンスに必須のHigh molecular weight-DNA抽出・精製法について、菌種ごとに具体的に検証を行なった。その結果、抽出が困難なストレプトコッカス属菌の適正なDNA抽出・精製法を明らかにし、MinIONによる菌種同定の有効性について学会発表を行うとともに、その成果を海外学術雑誌に投稿中である。さらに、グラム陰性桿菌について、耐性遺伝子の検出方法ならびに解析パイプラインを構築し、その成果を学会発表したほか、学術論文に報告した(Ashikawa K, et al.2018, および 1報海外学術雑誌投稿中)。抗酸菌について、MinIONによる解析の基礎的検証を2018年度に完了した。特に薬剤耐性遺伝子の検出については、簡易的なMulti-plex PCR法とMinIONを組み合わせた解析技術を開発し、その成果を国際学界において発表したほか、現在海外学術雑誌に投稿中である。これまで、抗酸菌を含む下気道の網羅的ゲノム解析(細菌叢解析)に必要な基礎的検討を概ね完了しており、現在、引き続き真菌の混在を念頭に、その解析方法についての基礎的検証を継続している。 2) 非抗酸菌患者への応用・・患者の検体および診療情報利用に関する倫理承認を2018年度に受け、現在も検体と診療情報の集積を行なっている。これまで、40検体を超える気管支肺胞洗浄液(BALF)を取得できている。病態解明に必要な検体数が確保できるよう、引き続き検体数を増やす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MinIONによる細菌叢解析に必要な技術開発のための基礎的検証に伴って、様々な呼吸器感染症を引き起こす病原微生物の解析技術を構築してきた。その成果が1本の英文学術雑誌に掲載されたほか、現在も3本の英文論文を作成し、海外学術雑誌に投稿中である。さらに、国内外の複数の学術集会においても、上記の成果を報告してきた。 以上のように、非結核性抗酸菌患者検体の解析に必要な基礎的検証を計画のとうりに終了し、順調に検体ならびに診療情報の集積を問題なく実施している。このような進捗から、計画は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2019年度は、実際の患者検体と集積した臨床情報をもとに細菌叢解析を実施し、MinIONの実用性を検証するとともに、非結核性抗酸菌症における病態解析にせまる。その成果については、海外学術雑誌へ投稿する。 具体的には、下気道局所における細菌叢、培養困難菌を含む複数の非結核性抗酸菌や病原微生物の混合感染が及ぼす影響、など、特に病態との関連性について明らかにする。また、本技術は下気道感染症の迅速新技術にもなりうるため、診断のための検査ツールとしての有効性についても、さらに検証する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額1,107円が発生したのは、キャンペーン価格などでわずかな割引などがあったためで、概ね計画通り執行していると考えます。来年度も計画通りに研究を行ってまいります。
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